理学療法士の視点から見た腰痛予防

宮崎市のリハビリ整体院E-Reha(イーリハ)です。

今回は、理学療法士の視点から見た腰痛予防の方法や職場環境の改善などについて、理学療法士だからこそできる腰痛予防への取り組みを解説します。腰痛発生の要因や環境上の問題に対し、適切な対策を取ることで、腰痛予防への取り組みが行えます。ぜひ参考にしてみてください。

日本で腰痛に悩まされている方は非常に多く、国民生活基礎調査によれば、腰痛は男性で最も多く、女性でも第二位の自覚症状として報告されています。特に20歳から40歳の就労世代での発症率が高く、生涯有訴率は80%を超えると言われています。

このように腰痛は、多くの人々の日常生活に影響を与えるだけでなく、医療費の増加や労働生産性の低下など、社会経済的にも大きな負担をもたらすことになるため、現在は予防の観点から理学療法士に求められる役割も増えてきています。

腰痛の主な要因

腰痛の発生要因は様々ありますが、大きく分けて動作要因、環境要因、個人的要因、心理社会的要因に分類されます。簡単にまとめてみます。

  • 動作要因:腰部に動的、静的に加わる過度な負荷や負担のことで、重量物の取り扱いや抱え上げての作業、前かがみ、中腰や体を捻る動作、長時間の同一姿勢での業務などが含まれます。
  • 環境要因:作業環境に存在する数々の有害因子のことで、腰部や全身への振動、寒冷刺激、滑りやすい床面、狭い作業環境、夜間勤務が多いなど、作業環境によるものが含まれます。
  • 個人的要因:年齢、性別、肥満、筋力低下、既往歴などの要因を指します。
  • 心理社会的要因:仕事への満足感の欠如や職場での対人関係のトラブル、上司や同僚からの支援不足、仕事上の相手とのトラブル、長時間労働、過重労働、疲労などが含まれます。

恐怖回避思考の影響

腰痛に対してのネガティブな感情や悲観的な解釈から、不安や恐怖感を抱くことになり、過度な安静や回避行動を取ることで、廃用や抑うつ、社会生活への不適応をもたらし、更に腰痛がひどくなる悪循環に陥ってしまうことを言います。

この点に関しては、これらの悩みに関わるセラピストとして、言葉や伝える情報など対象者への関わり方にも注意が必要な要因になります。

変に不安をあおる対応をされた場合と、適切に導いてくれる場合、仮に同じ施術内容だったとしても、今後の効果に差が出てきそうな感じがしませんか?

このような恐怖回避思考からの脱却や、そのような思考に導かない声掛けなど対応には、セラピストとして細心の注意が必要になります。

理学療法士による腰痛予防

これまで、理学療法士は運動療法を中心に整形外科疾患や脳血管疾患を中心に理学療法を提供してきた職業ですが、近年は理学療法士が持っている専門知識と技術を予防に活用することが求められるようになっています。

運動による予防

運動療法は理学療法士として、その専門性や強みを発揮できる腰痛予防の一つになります。

運動は慢性腰痛の治療として、多くのガイドラインでも推奨されていて、予防においても効果的と報告されています。

特定の運動が特別効果を発揮するというよりも、“運動を継続する”ことが最も重要とされています。

普段の身体活動が少ない人ほど慢性腰痛になりやすいという報告もあるので、日常的な運動のサポートなども理学療法士として重要な役割になります。

腰部の安定性を高めるための体幹のトレーニングや、柔軟性を改善するためのアプローチを行いながら、日常的な活動量を増やしていく関わりが重要です。

エレベーターではなく階段を利用したり、少し遠回りをして歩く距離を増やすなど、活動機会を増やすことも大事になります。

特に宮崎などの地方の地域は車での移動が中心になり、活動量が少ない傾向にあるため、意識的に活動機会を増やす必要があります。

正しい姿勢と動作の指導

腰部への負担を軽減するために、正しい姿勢と動作方法の獲得などは腰痛予防に不可欠となります。

理学療法士は、姿勢や動作の分析を専門とした医療職になります。私自身、長く病院勤務を行なってきましたが、この点に関が、理学療法士の一番の強みだと思います。

腰痛予防において、日常生活や職場での姿勢、動作方法などを分析し、腰痛を引き起こす要因を見つけ、適切な方法の指導していきます。

重たい物を持ち上げる際に、体の近くに寄せて、腰ではなく、下半身を使って持ち上げることや、その際に腰部の安定性を高めながら動作を行うなど、様々な視点から動作方法を指導することが可能です。

腰痛と座位姿勢との関係について詳しく解説した記事も投稿していますので、気になる方はこちらもご覧ください。

>>【必見】座位姿勢が腰痛に与える影響

職場・生活環境の改善

腰痛予防には職場や生活環境の改善も重要になります。

普段の作業環境の中に腰痛を発生させる環境要因がないかを評価し、環境を変えていくことで腰痛発生リスクを軽減させることが可能です。

環境に潜むリスクへの対応

理学療法士の視点から、作業環境や作業方法に潜む、腰痛悪化のリスクを評価し、対策を提案することが可能です。

例えば、作業台の高さが本人の身体に合っているのか、物運作業の動作方法が一方向になっていないかなどを評価し、適切な高さの提案、椅子の使用、動作方法が偏らないような環境調整などを理学療法士の視点から行うことで、腰痛の予防や改善に関わることができます。

教育による腰痛予防

病院などでは、「患者教育」などの言葉が使用されますが、最も良い理学療法は対象者本人が自分でケアや改善ができるようになることだと思います。

そのためには、適切な信頼関係のもと、理学療法士として適切な知識とケア方法の指導を行い、対象者本人が腰痛予防を意識し、対応できるように関わることができます。

誤った認識の一つが、「コルセット」の仕様です。腰痛が発生した時に、一般的にコルセットで腰を固定する対応がとられますが、最近ではコルセットの使用による腰痛予防の効果はないとされる報告が多くされています。

4週間以上のコルセット装着で、腰部を安定させる体幹筋群の萎縮を引き起こすことも指摘されているので、コルセットの使用は推奨されていません。(一般的な慢性腰痛の場合)

このように、正しい知識や最近の知見などを理学療法士の視点から伝え、教育的に関わることで腰痛発生リスクを本人自ら減らし、予防に向けた取り組みも可能になります。

腰痛予防に向けて、以下の点を確認してみてください。

日常生活での注意点

  • 腰痛が発生する特定の動きや姿勢はありますか?
  • 長時間の作業や偏った動作などはありますか?
  • 勝手の悪い作業環境はありませんか?
  • 適切な休憩やストレス発散などは行えていますか?

運動における注意点

  • 活動量が少なくなっていませんか?
  • 継続的に運動を行えていますか?
  • 腰部の安定性を高める運動はされていますか?
  • ストレッチなど柔軟性を高める運動はされていますか?
  • 適切な負荷量で運動を行えていますか?

生活習慣における注意点

  • 負荷のかかる姿勢をとっていませんか?
  • 十分な睡眠やバランスの取れた食事は取れていますか?
  • 喫煙や体重管理など問題はありませんか?
  • 過度なアルコール摂取はありませんか?

今回は、理学療法士の視点から見た腰痛予防における関わりについて解説しました。腰痛は多くの人々が悩む一般的な症状であり、適切に予防をとっていくことが重要です。

腰痛には様々な要因があり、それぞれに対して理学療法士の視点から見た注意点などを参考に、一度ご自身の生活を振り返ってみてください。

大事なのは『継続すること』のようです!

E-Reha(イーリハ)では、腰痛や姿勢の改善に関する専門的なカウンセリングをもとにしたリハビリ整体を行っています。お一人おひとりに合わせた施術やセルフケアの提案を行い、継続をサポートしています。腰痛でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

E-Reha(イーリハ) 〒880-0844 宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1 宮崎市のリハビリ整体院、ゴルフ整体院

参考文献

1)佐藤友則:腰痛予防における理学療法士の役割ー産業保健の視点からー.理学療法のあゆみ.32(1).10-16.2021

2)腰痛診療ガイドライン策定委員会:腰痛診療ガイドライン2019(改定第2版).南江堂.東京.2019.

3)職場における腰痛予防対策指針及び解説.東京.厚生労働省;2013.

4)厚生労働統計協会:国民衛生の動向2019/2020.厚生労働統計協会.東京.2020.

5)健康づくりのための身体活動基準2013. 東京.厚生労働省.2013

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