【腰痛持ち必見】理学療法士が教える腰痛改善と予防のポイント

お仕事や家事の際など、腰痛は日常生活において最も身近な悩みの一つになります。

解決しようと思っても、そもそも何をしたらいいのか分からないという経験をしたことがありませんか?

本記事では、腰痛の原因や改善方法、効果的な運動やストレッチについて、理学療法士の視点から、専門的に解説していきます。腰痛予防や改善の参考にしてみてください。

腰痛の主な原因

腰痛は、多くの人が一度は経験する一般的な症状になりますが、原因は様々で多岐にわたります。

84%の人が人生に一度は経験し、そのうち30〜40%が慢性腰痛に移行するという報告もあり、社会的にも大きな問題になっています。

主な原因としては、大きく分けて、脊柱由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性、その他に分類されています。>>詳しくは【重要】腰痛の原因について

腰痛は脊柱を構成する組織から引き起こされることが多く、その組織には椎間板、椎間関節、神経根、椎骨骨膜、筋・筋膜、靱帯、血管などがあり、様々な疾患によってこれらの組織が傷害され腰痛を引き起こします。

腰痛の慢性化

腰痛には発症からの期間別に、

・急性腰痛(発症から4週間未満)

・亜急性腰痛(4週間以上3ヶ月未満)

・慢性腰痛(3ヶ月以上持続する腰痛)

の3つに分類されています。

慢性腰痛では長期間の身体的な症状に加えて、破局的思考、運動恐怖感、自己効力感の低下、抑うつ、不安感などの心理社会的問題も伴うとされています。

“自分はそんな事ない”と思われる方も多いですが、実際には「腰が痛いから」と理由をつけて、自身の活動に制限をかけたりされている方は多くいらっしゃいます。

「持病」と諦めている方も多く経験してきました。

痛みを避ける(回避する)ために体を動かさなくなると、筋力低下や柔軟性の低下を助長し、ますます症状が悪化する悪循環に陥ることがあります。(負のループ)

腰痛に対して関わる上で、腰痛の軽減や改善が重要な目的になります。

しかし、これと並行して腰痛の慢性化を防ぐことも非常に重要になってきます。

腰痛を発症するということは、腰痛を引き起こすほどのストレスが腰部に加わっているということです。

身体機能の低下、不良姿勢による継続される腰部へのストレス、過剰な負荷など様々な要因が絡み合い、“結果として”腰痛を発症してしまいます。

若い方では「自然治癒力」が高く、一時的な対処療法(マッサージなど)で軽快する場合もありますが、これら様々な要因に対応しなければ、慢性腰痛へと移行する可能性があるため、普段の生活や自身の身体機能に目を向けていく必要があります。

日常生活での注意点

腰痛を改善し、慢性化を予防していく上で、日常生活において注意を払う点がいくつかあります。

人により差はありますが、特に重要なのが「姿勢」「動作」「環境」になります。

姿勢の注意点

腰痛と姿勢は密接に関係しています。

正しい姿勢は、脊柱が適度にS字を描く姿勢を保ちます。頚椎は前弯、胸椎は後弯、腰部は前弯した本来の姿勢を保つことで、様々な体への負担を減らし、腰痛の軽減に結びつきます。

では正しい姿勢とは?

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正しい姿勢は、基本的に耳ー肩ー股関節ー膝ーくるぶしが一直線になるような姿勢になります。

この位置関係が乱れた状態が、いわゆる不良姿勢になります。

猫背や反り腰などのアライメント異常がある場合、腰部への負担が強くなるため“いい姿勢(良肢位)”をできる限り保てるようにしていく必要があります。

姿勢と腰痛に関してはこちらも参考にしてみてください。>>【必見】腰痛と姿勢の関係

いい姿勢(良肢位)を保つためには、身体の柔軟性や体幹筋機能などが必要になりますが、日頃からこの適切なS字ラインを取りやすくするように意識してみてください。

いい姿勢を阻害する要因は様々ありますが、いくつかご紹介します。

1.ソファ

体が沈み込むため、骨盤が後傾し、腰椎の自然な前弯が損なわれ、背中が全体的に丸まった姿勢になります。この姿勢では、本来体を支えるための筋肉も活動が少なくなり、長時間の利用では筋機能低下へとつながってしまい、腰痛の慢性化、痛みの悪化につながる要因となります。

2.履き物

高いヒールは、過剰な腰椎の前弯を促し、姿勢不良の要因となります。長時間の使用になると、アライメントの変化を助長するため、腰部痛の予防には高さや使用頻度に注意する必要があります。

3.体重

体重増加により、腹部の重みで腰が過剰に反った姿勢を取りやすくなってしまいます。体重の増加に伴い、腰部へかかる負担も増加してしまうため、腰痛を引き起こしやすくなります。

4.ストレス

メンタル面の不調により、不良姿勢を取りやすくなってしまいます。うつむき姿勢となると、背中が丸くなり、正常なアライメントではなくなるため、腰部への負担が増え、さらに痛みに過敏になるなど腰痛への影響が報告されています。

正しい姿勢を維持するために、椅子の背もたれを適切に使用する、適度に運動し、体やメンタルの健康を保つなどは、一般的に言われていることではありますが、とても重要なポイントになります。

正しい姿勢をとると、その姿勢を保つために適切な筋活動も行われます。腰痛を軽減するための、体幹部の安定性改善においても、いい姿勢を意識することはとても大切です。

矛盾するようですが、姿勢を保つ筋肉は長時間働き続けることはないという報告がされていて、姿勢保持に関する考え方も変化しています。

同じ姿勢の中でも、わずかに身体を動かす、体重がかかる位置を変えるなど“一工夫”することで

重要なのはできる限りいい姿勢を意識しつつ、リラックスして長時間同じ姿勢を取らないようにすることです。

動作の注意点

普段繰り返される動作が腰痛に影響を与えます。

重量物の持ち上げや、一方向に偏った作業などは腰痛と密接に関係しています。

Nachemsonの報告が有名で、各姿勢ごとの椎間板内圧を表した図があります。

体を前に傾けた、体幹前傾位では椎間板内圧が非常に高くなり、重量物の持ち上げなどは腰の負担が非常に大きいと言えます。

また、看護や介護職、荷物の上げ下ろし作業などの職種では、腰痛が多いとされています。

これらの職業では、介助動作や荷物を、同じ方向に繰り返し行われる特徴があります。腰を捻る動きも加わるため、腰部にかかる負担はさらに大きくなります。

重量物を持ち上げる際は、「腰」で持ち上げようとすると、腰部への負担が大きくなってしまいます。対象物をできる限り体に近づけ、自身の重心を低く、体の捻りを少なくする動作方法で、可能な限り下半身の筋力で持ち上げるようにすることで、負担を減らすことができます。

また、例えば荷物を持ち上げる運動方向を、右からだけでなく、左からも行うなどの工夫も、偏った運動を減らすことに繋がります。

環境の注意点

家庭や職場など、普段生活する上での環境は腰痛に対して大きな影響を与えます。

腰痛と関連する環境要因として、日本理学療法士協会による「理学療法ハンドブック シリーズ3 腰痛」でも

腰痛の環境要因

・振動を伴う操作・運転

・寒冷・多湿な空間

・滑りやすい床面・段差

・暗く見えにくい空間

・狭く乱雑な空間

などが腰痛における環境要因として挙げられています。

職場環境において、デスクの高さが自身の身長に合わず低いものであった場合、より前屈み姿勢でのデスクワークが求められ腰部への負担が大きくなります。

寒冷環境では、筋肉が硬直しやすく、血流悪化などの影響や、繰り返される振動刺激が腰部に加わることで、椎間板に影響を与え腰痛を引き起こす要因となります。

適切な温度や明るさを保つ配慮、椅子やデスク、モニターの高さ調整、振動を軽減するためのクッションの利用など、環境整備を行うことで腰痛対策になります。

自宅においても、床での生活スタイルからテーブルなどを利用する生活スタイルへ変更する、床に置いてある物を減らすなども対策になります。

腰痛に対するエクササイズの目的は、大きく柔軟性の改善と、筋力の改善になります。

腰痛に対するストレッチ

体の柔軟性を改善することで、関節が正しい動きを行え、代償的な運動なども減り、結果として腰部にかかる負担を軽減することができます。

いい姿勢の保持も、関節や筋肉が動いて実現できます。

偏った姿勢や動きを長期間行うことで、関節や筋肉の柔軟性に制限が見られる場合があるため、特に腰痛に関わる部分のストレッチをいくつかご紹介します。

1.ストレッチポール

ストレッチポール(基本姿勢)

ストレッチポールにお尻から頭までが乗るように寝ます。脚は肩幅に開き、膝は90°適度に曲げ、手のひらを上にして、腕は軽く開きます。

腰部痛がある場合や、自宅にポールがない場合はバスタオルなどを丸めて代用してください。

2.脊柱起立筋ストレッチ

仰向けの姿勢で、ゆっくりと膝を抱えながら背中を丸めます。

背中から腰の筋肉を伸ばしていきます。

3.腹直筋ストレッチ

うつ伏せとなり、腕で床を押すように背骨を反らしていきます。

お腹の筋肉を伸ばしていきます。

4.ハムストリングスストレッチ

椅子に座り片脚を伸ばしたまま、ゆっくりと骨盤から上体を倒していきます。

太ももの裏の筋肉を伸ばしていきます。

5.腸腰筋ストレッチ

片膝立ちになり、片脚を大きく前方に出します。

骨盤を前方に移動させながら、膝をついた脚の股関節前面を伸ばしていきます。

腰痛に対する筋力トレーニング

腰痛の改善には腰部の安定化を図るトレーニングが勧められます。

Hurleyらの報告によると、低〜中強度負荷の運動であっても、慢性痛患者の機能・能力障害、QOL低下などに対して有効とされ、教育や管理下での実施によって効果が高まることを示唆しています。

また、ストレッチと筋力トレーニングの併用により効果が高まるとされていて、背筋群の筋力と腰痛との関連が高いとされています。

背筋群の中でも、特に多裂筋の重要性は多くの文献で述べられていますが、腹筋群と背筋群をバランスよくトレーニングし、活性化を図っていくことになります。

いきなり負荷の高いトレーニングを行うと、代償的な運動が起こり、効果的にトレーニングできずに、痛みを強めてしまう可能性もあるため、自身の機能に合わせた負荷量から、段階的に負荷を増やしていくことも大切です。

1.ドローイン

仰向けで膝を立て、お腹を凹ませるように下腹部に力を入れ、数秒間凹ました状態をキープします。主に腹横筋を収縮させますが、多裂筋も収縮させられるため、トレーニングの初期によく行われます。

2.多裂筋トレーニング(四つ這い)

四つ這いで、身体を真っ直ぐに保ちながら、片脚を後方に挙げます。

数秒保持して降ろし、両脚交互にこれを繰り返します。

骨盤をやや前傾位で行うのがポイントです。

3.クロコダイルブリージング

うつ伏せで背中にクッションなどを乗せ、呼吸に合わせ呼吸の際にドローイン、吸気の際に胸郭を拡張させます(背中を広げるイメージ)。

腹横筋と多裂筋の活性化が期待できます。

4.フロントブリッジ

うつ伏せになり、両肩の真下に肘をつき、腰を持ち上げます。

体が一直線になるようにしてください。

お尻だけが高くなる、腰が反るなどには注意し、必ず肩の真下に肘がくるようにしてください。

負荷が強い場合は、つま先ではなく、膝をついて行ってください。

5.サイドブリッジ

横向きになり、肩の真下に肘をつき、腰を持ち上げます。

体が一直線になるようにしてください。

腕で支えず、お腹の筋肉で支えるように、必ず肩の真下に肘がくるようにしてください。

負荷が強い場合は、つま先ではなく、膝をついて行ってください。

腰痛予防のポイント

正しい姿勢を意識する

腰痛を予防する上で、「正しい姿勢」を常に意識して見てください。腰椎の前弯を適切に保持し、腹横筋や多裂筋を同時に収縮させ、腰部を安定させることで、腰部への負担を減らすことができます。

すでに腰部痛がある方や、不良姿勢が習慣化している方は、体幹筋の機能低下が起こっている場合があり、最初はうまくいかないかもしれませんが、諦めずに続けて見てください。

定期的な運動習慣

ストレッチや体幹トレーニングを継続して行いつつ、最も重要なことは安静にせず「運動を継続すること」になります。

普段の身体活動が少ない人ほど、慢性腰痛になりやすいとの報告が多くあります。

ウォーキングやスイミングなど、腰部のトレーニングと並行して習慣的な運動も心がけてみてください。

ストレス管理

ストレスは腰痛の原因となることが多く報告されています。近年では、心理面へのアプローチも腰痛治療の一環として取り入れられるほどです。

日頃から、自身のストレス管理を行い、趣味活動やリラクゼーションなど、ストレスを溜め込まない生活を心がけてみてください。

コルセットは使わない

腰痛発症すぐの急性期に、一時的にコルセットを使用することはありますが、「腰痛診療ガイドライン2019」でも、コルセットは腰痛予防に有効とはいえないと記されています。

コルセットの継続した装着により、腰椎を安定させる筋群の萎縮を認めるとする報告も多く、その効果は少ないとされています。

コルセットに頼ろうとせず、普段の姿勢やトレーニングをしっかりと行うことが、腰痛の慢性化予防には非常に重要です。

腰痛は多くの人が経験する身近な悩みですが、改善や慢性化を予防するためには、原因や改善方法を正しく理解することが重要になります。

適切な姿勢、動作、環境の見直しを行い、日頃から柔軟性を高めるストレッチや体幹トレーニングを行うことで、腰部の安定性を高め、腰部の負担を減らしていくことができます。

普段から正しい姿勢を意識し、運動やストレス管理を行いつつ、腰痛の改善や慢性化の予防に繋げてみてください。

継続していくことが重要になりますので、是非参考にしてください。

E-Reha(イーリハ)では、腰痛に対する専門的なカウンセリング(評価)を行い、個別性のある施術やセルフケアを提供しています。筋骨格系疾患専門の運動器認定理学療法士が、より専門的にサポートいたします。

腰痛の改善や、再発を防ぐための具体的な方法を知りたい方など、お気軽にご相談ください。

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宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1 宮崎市のリハビリ整体院、ゴルフ整体院

参考文献

1)辻村孝之:腰痛に対する運動療法.治療.106(5): 537-542, 2024.

2)遠藤達矢ほか:腰痛に対するリハビリテーション. MB Orthop, 36(9): 90-101, 2023.

3)日本整形外科学会,日本腰痛学会・監:腰痛診療ガイドライン2019.南江堂,2019

4)日本理学療法士協会:理学療法ガイドライン 第2版.第6章 背部機能障害理学療法ガイドライン.385-426.2021

5)日本理学療法士協会:理学療法ハンドブック シリーズ3 腰痛.1-18.2020

6)Hurley DA, et al:Supervised walking in com- parison with fitness training for chronic back pain in physiotherapy:results of the SWIFT single-blinded randomized controlled trial. Pain.156:131-147,2015.

6)岩崎明夫:腰痛予防とその対策.産業保健 21.12-15.2016

7)土井稔:腰痛のメカニズム.臨床と研究,99巻12号,p.1411-1415,2022.

8)Nachemson A:The load on lumbar disks in different positions of the body,Clin OrthoP. 45:107-122,1966.

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