【理学療法士が教える】正しい姿勢と改善方法を徹底解説
皆さんは「いい姿勢」をどのようにイメージしますか?
背筋がピンと伸びて、胸を張った姿勢でしょうか?
実は、理学療法士の視点から見ると、『正しい姿勢』とは単に見た目が良い姿勢ではないんです。
本記事では、腰痛や肩こりなど様々な悩みの原因になる姿勢について、理学療法士としての視点から、基本的な解釈や、不良姿勢について、改善方法まで詳しく解説しています。
姿勢の基本知識
いわゆる「いい姿勢」
一般的にいい姿勢とは、背骨がS字の曲線を描き、横から見た時(矢状面)に耳ー肩ー股関節ー足首が一直線になるような、それぞれの位置関係(アライメント)から捉えられています。
このアライメントからの考えも重要ですが、この正しい姿勢をとり続けても腰痛などを引き起こすことがあります。
なぜなら、私たちは同じ姿勢をずっととり続けることはなく、日常の中でも様々な姿勢をとることになるからです。
先行研究でも、姿勢を保つ際に重要な「多裂筋」の活動に関して、同じ姿勢をとり続けても、長時間働き続けることはないという報告もされています。
姿勢を保つためには筋肉の活動は重要ですが、どの筋肉も疲労します。
そのため、姿勢について正しく理解する上で重要なのが、姿勢の“バリエーション”になります。
専門家が考える「正しい姿勢」
理学療法士の視点から見ると、『正しい姿勢』とは単に見た目が良いアライメントではなく、多様なバリエーションを取れることが重要になります。
そこで、姿勢について基本的な考え方を抑えていきます。
姿勢を保つための組織
姿勢を保つために、私たちは骨関節、靭帯や筋膜などの「非収縮要素」と、筋肉などの「収縮要素」をバランスよく使いながら姿勢を保っています。
例えば、長時間立っているときに細かく重心を移動させたり、小さな動きを繰り返すことで、特定の筋肉や関節に過度な負担がかからないようにしています。
静止しているようでも、実は姿勢を微調整しながら体の負担を分散させています。
エネルギー効率
理想的な姿勢は、身体の重心線上に脊柱と各関節が配置されることになります。
簡単に説明すると、身体の中心に、頭やお尻など重たい組織が位置する状態です。
この姿勢では、無駄な筋肉の活動が抑えられ、エネルギー効率を最大限に保つことができます。
スウェイバックのような不良姿勢では、腰部多裂筋や内腹斜筋などの筋肉の活動が低下し、腹直筋や外腹斜筋が過度に働くため、エネルギー効率が悪くなり筋疲労を引き起こしやすいと報告されています。
姿勢を保持する筋肉
姿勢を保持し、背骨を安定化させる筋肉は大きく二つのシステムに分類されます。
ローカル筋(深層筋)システムとグローバル(表層筋)システムになります。
ローカル筋システムには、身体の深層にある筋群と腰椎に起始・停止をもつ筋群が含まれます。これらの筋群は、脊椎の関節中心に近いところにあり、筋長が短いため、それぞれの背骨の運動を制御し、脊柱の安定させてくれます。
一方、グローバル筋システムは表在にある大きな体幹筋群が含まれます。これらの筋群は、脊柱の運動に大きく関与するだけでなく、直接的に胸郭と骨盤に力を伝達するため、体幹に加えられた外力と均衡を保つ役割があり
、主に脊柱の運動を伴うような動的姿勢制御で重要になります。
姿勢保持の二つの筋システム
- ローカル筋・・・横突間筋、棘間筋、多裂筋、胸最長筋の腰部、腰腸肋筋の腰部、腰方形筋の内側線維、腹横筋、内腹斜筋(胸腰筋膜に付着する線維)
- グローバル筋・・・胸最長筋の胸部、腰腸肋筋の胸部、腰方形筋の外側線維、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋
グローバル筋システムは脊柱の関節中心から遠く、筋長が長いことから,骨格構造に与えるストレスが大きくなるため、本来姿勢を保つ際の静的姿勢制御では、活動が抑えられる特徴があります。
しかし、腰痛患者においては、ローカル筋システムに機能異常が生じ、ローカル筋を制御することが出来ず、それが度重なる挫傷や慢性的痛みの原因となっていると報告されています。
つまり、理想的な姿勢ではこれらの筋肉のバランスがとても重要になります。
姿勢のバリエーション
一般的に不良姿勢と呼ばれる、「猫背」や骨盤を前に突き出すような「スウェイバック」と呼ばれる姿勢ですが、それ自体が“悪い”というわけではありません。
これらの姿勢は、リラックス姿勢として姿勢保持筋を休ませることができます。
姿勢を保つ方法を大きく分けると、非収縮要素による受動的システムと、収縮要素による能動的システムに分けられます。
姿勢を保つ方法
- 受動的システム・・・脊椎、椎間板、靭帯、関節包などの受動的張力
- 能動的システム・・・筋収縮
常に活動を続けることは、筋肉にとっても負荷になるため、私たちは受動的システムに頼った受動姿勢をはさみ、“休憩”をとりながら姿勢を保っています。
しかし、この様な非収縮要素に頼った受動姿勢に“依存する”と、常に靭帯などに過剰なストレスが加わり続けるため、将来的に関節の変形などを引き起こし、腰痛などの原因となります。
ここで重要なのが、この様な調節機構は「脊柱の可動性に依存している」ということです。
これは、靭帯などで身体を支えようとする場合、可動域を最大に動かした位置で姿勢を保つことになるためです。そのため、脊柱の可動性が少なくなると、受動的姿勢をとりやすくなります。
様々なバリエーションで能動姿勢と、受動姿勢をバランスよくとることが、身体に負担がかからない姿勢と言えるので、「いい姿勢」のポイントは身体を支える「筋力」と「可動性」になります。
『正しい姿勢』とは単に見た目の良さだけでなく、エネルギー効率良く、多様なバリエーションの姿勢を取る能力が備わった姿勢と言えます。
不良姿勢の種類と影響
不良姿勢の種類
猫背(スランプ)
猫背は肩が前に突き出て、背中が丸まった姿勢のことを言います。
胸椎の後弯(背中の丸まり)が強くなった姿勢で、肩こりや腰痛、肩甲骨の動きの制限などを引き起こします。
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、現代の生活様式に関連して増加傾向にあります。
猫背では、背中の靭帯で身体を支えようとするため、腹筋群などの弱化や伸張性の低下、背筋群の過剰な緊張を引き起こします。
スウェイバック
スウェイバックは骨盤が前方に移動した姿勢で、対照的に上半身は後傾し、後方へ移動します。
股関節前面の受動要素に依存した姿勢で、体幹筋や股関節筋で活動低下を示す筋が多いことが報告されています。
この姿勢保持を中心にすると、体幹や股関節のローカル筋の機能不全や、関節構成要素の変形などを引き起こす恐れがあるとされています。
反り腰(腰椎過前弯)
反り腰は、骨盤が前傾し、腰椎の前弯が過剰になった姿勢です。スウェイバックと対照的に上半身は前傾します。
腰部の起立筋や多裂筋などが過剰に緊張するため、腰痛の原因となり、ひどい場合は脊柱管狭窄症のリスクも高くなります。
腹筋群の弱化を引き起こし、ヒールを履くことで起こりやすくなる姿勢です。
一見、腰のラインが綺麗に見えますが、実は腰部に過剰な負担がかかる姿勢になります。
不良姿勢が引き起こす問題
腰痛
不良姿勢は腰痛の原因になります。背筋群の過剰な緊張が継続し、腹筋群の機能低下が起こるため、腹筋群と背筋群のバランスも崩れてしまいます。
スウェイバックを持つ人の腰痛の訴えが多いとする報告もされています。
単に腰痛といっても、様々な痛みの原因があり、筋肉による痛みだけでなく、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など重大な障害になる場合もあります。詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。>>【重要】腰痛の原因について
肩こり
猫背やスウェイバックは肩こりを引き起こしやすくなります。
これらの不良姿勢では頭部が前方に移動するため、頭部を支えるために頸部周囲筋の負担が増大します。首や肩周囲の筋肉が持続的に緊張することで、血行不良が起こり、肩こりを引き起こしやすくなります。
胸椎の後弯が起こることで、肩甲骨の動きも悪くなり、肩関節の機能障害を引き起こすきっかけになる可能性があります。
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用も原因の一つになり得ます。
その他の健康問題
スウェイバックや反り腰を持つ人は、運動時の肉離れや膝関節疾患の発生率が優位に高いことが報告されています。
その他にも、運動機能の低下や消化器系の問題、心理的な影響など様々な健康問題に関連する可能性があります。
不良姿勢は、長期間継続してその姿勢をとることで、身体に影響を与えていき、多くの痛みや障害の原因となってきます。
当然、その期間に癖づき(習慣化)、機能低下が進行し修正が難しくなることがあるため、日頃から意識して『正しい姿勢』を心がける事が重要です。
姿勢改善方法
姿勢は、受動的システムと能動的システムをバランスよく使い分けながら、様々なバリエーションの姿勢を保つ能力が重要のため、これらのシステムの機能改善を行なうことが一つの目的になります。
詳しい運動方法を知りたい方はこちらもご覧ください。>>【腰痛持ち必見】理学療法士が教える腰痛改善と予防のポイント
ストレッチポール
猫背など胸椎後弯が大きくなり、可動性の低くなった方はストレッチポールで柔軟性の改善を図ります。
後弯が強く、痛みの強い方は、バスタオルを丸めてポールの代わりに代用してみてください。
脊柱起立筋ストレッチ
腰の筋肉をストレッチし、身体の柔軟性を改善していきます。
痛みのない範囲でゆっくり伸ばしてください。
腹直筋ストレッチ
お腹の筋肉をストレッチし、身体の柔軟性を改善していきます。
過度に腰が反りすぎないように注意しながら、お腹の前面の筋肉を伸ばしていきます。
ハムストリングスストレッチ
太ももの後ろの筋肉を伸ばしていきます。
この筋肉が硬い場合、骨盤が前方に移動したり、骨盤の後傾を引き起こす場合があるため、柔軟性の改善が大事になります。
腸腰筋ストレッチ
股関節の前面の筋肉を伸ばしていきます。この筋肉が硬くなると、骨盤の前傾を強くする事があり、反り腰の原因の一つになる場合があります。
ドローイン
ローカル筋の一つ、腹横筋の機能改善を図っていきます。姿勢保持を行う際に重要になる筋肉のため、下っ腹に力が入っている感覚を感じながら行なってみてください。
多裂筋トレーニング
ローカル筋の多裂筋の機能改善を図っていきます。
腰背部の安定性や、それぞれの背骨を動かす際に重要になる筋肉になります。
負荷が強いと、脊柱起立筋などのグローバル筋が優位になってしまうため、軽い負荷と正しい姿勢に注意しながらトレーニングしてください。
日常生活での姿勢
日常生活において、不良姿勢に偏りすぎないように、下記のようの点に注意してみてください。
デスクワーク
長時間のデスクワークは不良姿勢を助長しやすくなります。
適切な椅子と机の高さに調整し、30分に一度程度、定期的にストレッチを行うことで、偏った姿勢保持を防ぐ事ができます。
作業中、左右へ重心を移動させることでも、持続的な姿勢保持を回避できるため、試してみてください。
スマートフォン
現代社会において、スマートフォンを使用する頻度が増えています。手元を覗き込むような姿勢は、胸椎の後弯や頭部の前方移動を助長してしまいます。
テーブルに肘をつき、目線の高さにスマートフォンを持ってくるなど、長時間同じ姿勢や身体に負担のかかる姿勢を保持しないように注意してみてください。
脚組み
座る際に脚を組むことは、姿勢保持筋を休ませる戦略のひとつになりますが、人により片足ばかりに偏りがみられる場合があります。
左右の脚を組み替えるなど、偏らないように心がけてみてください。
まとめ
今回は理学療法士の視点から「正しい姿勢」について解説しました。一般的に言われる不良姿勢そのものは、私たちが自然に行う姿勢であり、偏ることで様々な問題を引き起こす原因になります。
重要なのは、様々なバリエーションの姿勢をバランスよくとることになります。
腰痛や肩こりなどの障害予防のためにも、普段の姿勢に気をつけながら、柔軟性と筋力の維持・機能改善を行なってみてください。
E-Reha(イーリハ)では、運動器認定理学療法士が、姿勢や身体の状態を詳細に評価し、姿勢不良のお悩みや腰痛、肩こりを根本的に改善を図るために、個別性のある施術やセルフケアの提案などを行なっています。
マッサージなどでの一時的対応ではなく、姿勢不良やそれに付随するお悩み改善に対してより専門的にサポートしていますので、姿勢不良などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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FAQコーナー
Q1: 正しい姿勢には何が重要ですか?
A1: 様々なバリエーションの姿勢をバランスよく取るための「可動域」と「筋力」が重要になります。
偏った姿勢をとることで、身体には負担がかかり続けることになります。
Q2: 姿勢が悪いとどのような影響がありますか?
A2: 偏った不良姿勢をとることで、腰痛や肩こりをはじめ、関節の変形や、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの障害を引き起こすリスクを高める可能性があります。
Q3: 普段の生活で気をつけることはありますか?
A3: 偏った姿勢を取らず、デスクワークの合間にストレッチを入れるなども重要になります。机や椅子の高さや、スマートフォンを使用する姿勢など、不良姿勢に偏らない工夫が大切になります。
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