【詳細解説】座位姿勢と筋活動
いい姿勢になって、腰痛や肩こりを防ぎたいと思われたことはありますか?
これらのお悩みを解決するためには、筋力は非常に重要な要素になります。本記事では、座位姿勢における体幹筋と股関節筋の役割に焦点を当てて解説していきます。「姿勢を良くしたらいいのは分かるけど、そんなの無理だよ。」と諦めかけている方も、是非参考にしてみてください。
腰痛や肩こりを招く座位姿勢
現代社会において、デスクワークなどの長時間座っての作業は増えており、座位姿勢からくる腰痛や肩こりでお悩みの方は多くいらっしゃいます。
では、なぜ立つよりも楽なはずの座った姿勢が腰痛や肩こりの原因になるのでしょうか?
座位姿勢による体への負担
立位と比べると、座位では椎間板内圧(背骨にかかる負担)は大きくなるとされてきましたが、実は、座位姿勢のなかでも姿勢が異なることで、椎間板内圧が変化することが分かっています。
具体的には、猫背のような体が曲がった前屈姿勢では、立位の約1.7倍の圧力がかかるという報告があります。
このような椎間板内圧の増加は、受動的システムに依存した姿勢をとることが要因になります。
私たちの体には、受動的システムと能動的システムがあり、普段はこれらをバランスよく使いながら姿勢を保っています。
姿勢を保つ方法
- 受動的システム・・・脊椎、椎間板、靭帯、関節包などの受動的張力
- 能動的システム・・・筋収縮
猫背(スランプ)の様な座位姿勢は、能動的システムである姿勢保持筋を緩め、脊柱をより後弯(後に丸く)することで脊柱ヘとストレスを移行させた、受動的システムに依存した姿勢となります。
筋肉を使うと疲れるから、骨や靭帯にもたれて姿勢を保っている様な状態です。
つまり、猫背は体幹筋の緊張を軽減し、リラックス姿勢をとった結果、脊柱を含めた靱帯や関節包などの受動要素にストレスを蓄積させることになります。
直立姿勢から猫背(スランプ)になることで,背臥位(仰向けで寝た姿勢)と同程度まで体幹の筋活動が低下したという報告もあります。
そのくらい、猫背は体幹筋を使っていない姿勢ということです。
また、反り腰のような背筋を伸ばすような姿勢保持筋の過度な緊張(特にアウターマッスル)も、筋肉の過剰な収縮に伴い脊椎内圧を高めるとされています。
やはり受動的システムと能動的システムをバランスよく使っていくことが、痛みの軽減や将来的な障害を予防するためには重要になります。
座位姿勢と筋肉の関係
身体への負担が少ない座位姿勢では、骨盤を直立させ坐骨で体重を受けつつ、背骨を適切な位置で保持する必要があります。そのためには、体幹を安定させる体幹筋と、骨盤に関与する股関節筋の機能が重要となります。
座位姿勢における体幹筋の重要性
姿勢を保持し、背骨を安定化させる筋肉は大きく二つのシステムに分類されます。
身体の深層で脊椎の関節中心に近いところにあるローカル筋システムと、身体の表在にある大きな体幹筋群で、主に脊柱の運動を伴うような動的姿勢制御に重要となるグローバル筋システムです。詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。>>【理学療法士が教える】正しい姿勢と改善方法を徹底解説
腹横筋や多裂筋などの「ローカル筋」は、脊柱を安定させる役割を担っているため、これらの筋肉が適切に機能することで、脊柱にかかる負荷を軽減することができます。
体幹のローカル筋が機能せず、外腹斜筋や脊柱起立筋といった表層にある「グローバル筋」に依存すると、脊柱にかかるストレスが増大し、腰痛などの原因となる可能性があります。
座位姿勢における体幹筋に関する研究
胸部や腰部の前弯を強める座位姿勢(胸を張った反り腰姿勢)をとることで、体幹のローカル筋(内腹斜筋、多裂筋)の活動が減り、グローバル筋(外腹斜筋,胸部脊柱起立筋)の活動が増加することが報告されています。
首の筋群に着目した研究では、胸椎直立(胸を張った姿勢)での座位姿勢は頸部の脊柱起立筋活動は低下しますが、胸部の脊柱起立筋(背中の筋肉)は活動が増えるとされています。
一方、スランプ(猫背)姿勢では、背中が丸くなった状態のため、目線を上げる必要があり、首と胸部の脊柱起立筋の活動が増えると報告されています。
このように猫背をとることで、肩こりのリスクが増えることは、研究でも報告されています。
一般的に、姿勢を正すときに「胸を張って」と肩甲骨を締めるように指導されることがありますが、このような肩甲骨を内転させ胸椎を伸展(反らす)姿勢をとることで、多裂筋などのローカル筋の活動が減り、グローバル筋の活動が増えることが報告されています。
見た目的な姿勢の改善だけではなく、しっかりと体の機能を改善させることが、腰痛や肩こりの軽減、将来的な障害の予防には重要になってきます。
座位姿勢における股関節筋の重要性
骨盤を直立させる座位姿勢において、股関節屈筋群の機能はとても重要となります。
基本的に、立っている時の両脚は骨盤に対して真っ直ぐになりますが、座った姿勢では股関節は曲がっています。
このような姿勢では、臀筋(お尻の筋肉)などの股関節の後方にある筋群は引き伸ばされるため、その力(静止張力)によって骨盤は後方に倒れやすくなってしまいます。
そのような状況で、骨盤を前傾(前に倒す)させるために活動するのが、股関節の前面に位置する屈筋群になります。
座面に固定された太ももに対して、骨盤が前傾する動きは、股関節を曲げる(屈曲)動きによって行われるため、座位姿勢における股関節屈筋群の機能は非常に大切です。
また、臀筋群が硬いと、骨盤が後方に倒れやすくなるため、臀筋群の柔軟性も大切になります。
不良姿勢における股関節筋
スランプ(猫背)姿勢では、骨盤は後傾位になりますが、この時の股関節では、前面に存在する股関節屈筋群は引っ張られる状態になり、収縮力による姿勢保持ではなく、ゴムが引っ張られるような弾性力に依存した座位姿勢となります。立位では、骨盤を前方に移動させるスウェイバック姿勢の際も、股関節では同様の状況となっています。
脚を組む姿勢においては、大殿筋や梨状筋、また関節包や靭帯が伸長されることで、仙腸関節(骨盤の関節)を安定させるとされています。このような姿勢も、筋収縮による座位保持ではなく、受動的システムの貢献度を高めた姿勢になるため、長期間または高頻度でこのような姿勢をとることで受動要素ヘストレスを蓄積することになります。
このような不良姿勢では、本来骨盤を直立位に誘導する腸腰筋などの股関節屈筋群の機能は低下しやすく、長期的に不良姿勢を取られていた方が、いざ適切な姿勢を保持しようとすると、すぐに疲労するため長続きしにくく、やはり日頃から意識して、正しい姿勢を心がけたり、ストレッチやトレーニングを継続していくことが重要になります。
まとめ
座位姿勢は、習慣的に偏った姿勢を取りやすく、様々な悪影響の原因にもなりえます。正しい姿勢をとる上で『体幹筋』や『股関節筋』の働きは非常に重要になります。
これらの正しい知識を踏まえた上で、日頃の姿勢の意識や、ストレッチなどのトレーニングに活かしていくことが将来的な健康の維持には重要になるので、ぜひ参考にしてみてください。
FAQ
1.いい姿勢を長時間維持するためには、何を意識したらいいですか?
いい姿勢を保持するためには、腹横筋や多裂筋などのローカル筋の働きが重要になりますが、これらの筋肉もずっと活動し続けることはできないため、休ませてあげることも重要になります。
基本的にいい姿勢を保ちつつ、猫背や足を組む姿勢などのリラックス姿勢をとることも時には大切になります。
定期的に立ち上がったり、ストレッチをするなども勧められます。
いい姿勢を取り続けなければいけないというよりも、偏った姿勢にならないように注意を向けてみてください。
2.猫背を治すにはどうしたらいいですか?
猫背姿勢の原因としては、体幹筋や股関節筋の機能低下や、背骨を含めた柔軟性の低下が大きな原因になります。人により問題となる場所は違いますが、ストレッチポールなどでの柔軟性のトレーニングや、適切な負荷量での体幹筋のトレーニングは重要です。
ご自宅でできるトレーニングを一部紹介しているのでこちらを参考にされてみてください。>>【必見】腰痛と姿勢の関係
3.猫背などを放っておくとどうなりますか?
慢性的な肩こりや腰痛の原因の一つにもなり、長期間の不良姿勢から、体幹筋の機能低下、関節の硬さなどが起こるため、関節的に腰や首の障害を引き起こすこともあります。
ヘルニアや脊柱管狭窄症などの障害を持たれている方の中には、昔から姿勢が悪いことを自覚されている方も多く経験しました。
将来的な健康を守るためにも、今のうちからいい姿勢を意識して、障害の予防を心がけてみてください。
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参考文献
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- Oatis CA:オーチスのキネシオロジー 身体運動の力学と病態力学 原著第2版. 山崎 敦,佐藤俊輔・他(訳),ラウンドフラット,東京,2012.
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