五十肩は自然に治る?それ危険かもしれません。

「五十肩(肩関節周囲炎)はそのうち自然に治る」

一度はこのような言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

しかし、理学療法士の視点から最新の医学的根拠(エビデンス)をもとに考えていくと、この通説には大きなリスクが隠されています。

今回は、5つの学術論文に基づき、五十肩を放置してはいけない理由について詳しく解説します。

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩・四十肩)は、40〜60歳代に好発し、明らかな原因がないにもかかわらず肩の疼痛関節可動域制限を主症状とする疾患群の総称になります。

「五十肩」という言葉は、江戸時代の国語辞典である「俚言集覧(りげんしゅうらん)」に記載されたことから一般に広く用いられるようになったと言われています。

肩関節周囲炎の根本的な原因はいまだ完全には解明されていませんが、主な病態は以下の通りとされています。

まず、肩関節周囲炎は肩の「腱板疎部(けんばんそぶ)」や「烏口上腕靭帯(CHL)」周辺での炎症が最初に起こると言われています。

これが進行すると、肩関節を包む「関節包」全体に炎症が広がり、最終的に肥厚および線維化(縮んで硬くなること)が生じて関節が硬くなってしまいます。

関節包が硬くなることで、腕を動かす際に肩が正常な位置で運動が行えなくなり、肩が動かしにくくなったり、周囲の組織が挟み込まれる(インピンジメント)などが起こり、さらに痛みが悪化することになります。

7年経過後も35〜50%に痛みが残存する

従来、五十肩は「1年半〜2年で自然に治る(self-limiting)」と考えられてきました。

しかし、大規模な追跡調査の結果、発症から7年が経過しても35〜50%の患者に痛みが残存していることが報告されています。

つまり、半分近くの方は「放置」した結果、痛みが遷延化・難治化し、慢性疼痛へと移行してしまっているのが実情です。

「いつか治るだろう」と放置することで、数年後も後悔することになりかねません。

早期に適切な介入(リハビリ)を行うことが、後遺症を防ぐ鍵になります。

「痛いから動かさない」が招く組織の変性

五十肩の本態は、関節包(関節を包む袋)のコラーゲンが変性し、厚く硬くなることにあります。

痛みや炎症が出てしまうことで、長期間動かさないままでいると、関節の包む袋が癒着してしまい、肩が全く上がらない「拘縮(こうしゅく)」という状態を招きます。

こうなると、回復にはさらに長期的な時間が必要となってしまいます。

脳が痛みを作り出す「中枢感作」の恐怖

近年の研究では、五十肩の痛みは単なる組織の損傷だけでなく、神経系の影響も報告されています。

強い痛みを恐れて安静にしすぎると、脳の痛みセンサーが過敏になる「中枢感作」が起こり、本来痛くないはずのわずかな動きでも激痛を感じるようになってしまいます。

運動は「最強の痛み止め」になる(EIH)

「痛いのに動かしていいの?」と疑問に思うかもしれません。

しかし、 適切な負荷で運動を行うことで、脳内から痛みをおさえる物質が放出され、痛みの閾値が上がる(痛みを感じにくくなる)ことが科学的に証明されています。

運動誘発性痛覚抑制(EIH:Exercise-Induced Hypoalgesia)という仕組みになります。

つまり、運動そのものが「鎮痛剤」の役割を果たすということです。

見極めが重要

「五十肩」という言葉があまりにも有名になり過ぎて、肩関節痛・可動域制限が出ても自然治癒するものと思われ、患者さんやその家族、また医療従事者までもが軽くみる傾向にあります。

しかし、可動域制限をともなう肩関節痛は五十肩だけではなく、いろいろな病態の可能性があります。

中には、「肩板断裂」と言われる肩のインナーマッスルが切れている状態が隠れている場合もあります。

「専門的な評価」で症状を把握した上で対応

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)は、時間の経過とともに大きく3つのステージに分類されます。

病期別名特徴的な病態・症状
炎症期Freezing phase炎症が強く、安静時痛や夜間痛が激しい。徐々に関節が硬くなり始める。
拘縮期Frozen phase激しい痛みは落ち着くが、関節包の線維化が進み、全方向への可動域制限が顕著になる。
寛解期Thawing phase線維化した組織が徐々に伸張性を取り戻し、可動域が回復していく時期。

現在の五十肩がどのようなステージにあるのかを把握した上で、実際に出ている肩の痛みの原因をしっかりと見極め、適切な運動や負荷を行うことが、痛みを長引かせ、酷くしていかないためにはとても重要になります。

炎症期の対応

肩関節周囲炎の炎症期(Freezing phase)では、「疼痛の緩和と炎症の鎮静化」を図り、疼痛に伴う「二次的な機能低下や拘縮(癒着)の進行を最小限に抑えること」が重要とされています。

この時期は安静時痛や夜間痛が強く、無理な運動は炎症を増悪させ、症状を長期化させる恐れがあるため、運動のし過ぎには注意が必要です。

炎症期の最優先事項は、痛みを誘発させないことと、炎症を鎮めることになるため、肩関節への負担を減らすため、タオルやクッションを用いて肩をリラックスした状態に保つことや、将来的な関節可動域制限を最小限にするため、炎症の増悪がないようにしながら、筋のリラクゼーションや可動域訓練を行い、癒着や拘縮の予防を行なっていきます。

また、炎症を悪化させないように着替えなどの日常生活動作や、夜間の就寝姿勢などについても適切に対応して行くことが重要です。

拘縮期の対応

肩関節周囲炎の拘縮期(Frozen phase)では、炎症期に生じた組織の線維化や癒着による「関節可動域制限の改善」が最大の目的となります。

この時期は激しい安静時痛が落ち着く一方で、可動域制限(特に外旋制限)が顕著になるため、積極的な運動療法や徒手療法が重要になります。

具体的には、関節モビライゼーション(関節の動きを良くする施術)や筋膜リリース、肩甲骨や胸郭の運動、筋力トレーニングなど、さまざまな方法で可動域の改善を図っていきます。

拘縮期であっても、無理な強度のストレッチは炎症を再燃させ、痛みを悪化させるリスクがあるので注意が必要になります。

炎症期に、適切な対応が行えると、拘縮期に見られる障害を軽減、予防することができるため、やはり早い時期からの対応が非常に重要になります。

五十肩は「そのうち自然に治る」と軽く考えられがちですが、最新のエビデンスを踏まえると、放置によって痛みや可動域制限が長期化・慢性化するリスクは決して低くなく、およそ半数近くの方が発症から7年経過しても痛みが残存しているという報告もあります。

特に、痛みを恐れて肩を動かさない期間が続くと、関節包の線維化や中枢感作が進行し、回復までに何年も要するリスクも少なくありません。

現在の五十肩が「どのステージ(炎症期・拘縮期・寛解期)にあるのか」を正しく評価し、その段階に応じた適切な対応を行うことがとても重要になります。

五十肩は、早期から専門的な視点で介入することで、痛みの遷延や後遺症を防ぐことができる疾患です。

「様子を見る」ではなく、「今の状態を正しく知り」適切に対応することが、回復への最短ルートになります。

E-Reha(イーリハ)では、運動器認定理学療法士が、肩関節周囲炎(五十肩)に対して、痛みや炎症の状態、可動域や筋力、姿勢など、さまざまな専門的評価を行い、問題点の把握を行なっています。

理学療法士として視点から、現在の問題点や病状に合わせて、一人ひとりに合わせた施術やセルフケアのご説明をしています。

もし、肩の痛みや動かしにくさなどでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

E-Reha(イーリハ)

〒880-0844  宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1

宮崎市のリハビリ整体院、ゴルフ整体

参考文献

1)権田芳範, 金子和夫:五十肩(凍結肩)と運動療法. ペインクリニック 40(3):383-395, 2019

2)岩堀裕介:凍結肩(肩関節周囲炎、いわゆる五十肩). 関節外科 38(suppl-2):77-84, 2019

3)春名匡史, 立花孝:肩関節周囲炎に対する理学療法診断の進め方. 理学療法 38(1): 39-46, 2021

4)服部貴文, 他:肩関節痛の運動療法. ペインクリニック 42(4): 505-511, 2021

5)筒井廣明:中高年の肩関節疾患の治療 – スポーツをながく楽しむために -. 臨牀と研究 95(4): 448-454, 2018.

Q:痛みが強くても動かしたほうがいいですか?

A: 痛みの時期や種類によりますが、夜間痛などの強い自発痛がある時期(炎症期)は、痛みを適切に管理して行くことが大切です。しかし、むやみな安静は回復を遅らせることにもつながるため、「痛みの出ない範囲」から動かしていくことが重要です。

Q:五十肩は放っておけばいつか治りますか?

A: 多くの場合は改善に向かいますが、研究では発症から7年経っても35〜50%の方に痛みが残ると報告されています。放置すると慢性痛や可動域制限が残るリスクがあるため、早期に適切な運動療法を開始することが、回復や後遺症の防止にとっても重要です。

Q:運動すると逆に悪化しませんか?

A. 強すぎる運動や無理なストレッチは悪化の原因になりますが、適切な負荷で行う運動は痛みを抑える作用(EIH)が報告されています。自己判断せず、専門家にご相談ください。

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