変形性膝関節症で膝が痛いとき、運動しても大丈夫?運動療法の考え方

「膝が痛いのに、運動しても大丈夫なのだろうか」
変形性膝関節症と診断された方の中には、このような不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
「軟骨がすり減っていると言われたから、できるだけ膝を使わない方がいいのでは?」
「ウォーキングやスクワットをすると、さらに悪くなるのでは?」
そう考えて、運動を控えている方もいるかもしれません。
しかし、変形性膝関節症では、状態に合わせた運動療法は治療の重要な選択肢の一つです。
日本整形外科学会の「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」では、運動療法について、鎮痛、身体機能の改善、日常生活機能の改善が認められ、有用であるとして強く推奨されています。一方で、エビデンスの強さはCとされており、効果の推定には一定の不確実性があります。
大切なのは、
「痛いから動かさない」でも、「痛くても我慢して動く」でもなく、今の膝の状態に合わせて運動を調整することです。
なお、変形性膝関節症の治療は運動だけで完結するものではありません。患者教育や自己管理、必要に応じた体重管理、薬物療法なども含めて、その方の状態に合わせて考えていきます。
この記事では、変形性膝関節症で膝が痛いときに、
- 運動してもよいのか
- どのような運動が考えられるのか
- 痛みがあるときに何に注意すればよいのか
- なぜ人によって必要な運動が違うのか
について、理学療法士の視点から解説します。
膝が痛くても、運動して大丈夫?
結論からいうと、変形性膝関節症では、多くの場合、適切に調整された運動療法がすすめられます。
国内外の診療ガイドラインでも、運動療法、患者教育、自己管理などは保存療法の重要な要素として位置づけられています。
さらに、2025年にBMJに掲載されたネットワークメタ解析では、217件のランダム化比較試験、15,684人を対象に、有酸素運動、筋力強化運動、柔軟性運動、神経筋運動、複合運動などが比較されました。複数の運動方法で、痛みや身体機能、歩行能力、生活の質への有益性が示されています。
この研究では有酸素運動が複数の評価項目で良好な結果を示しましたが、「すべての方に有酸素運動が最適」という意味ではありません。
筋力強化や神経筋運動、複合運動などにも有益性が示されており、必要な運動は筋力、関節の動き、痛みの出方、生活状況などによって変わります。
また、2025年のBMJ Openでは、58件のシステマティックレビューをまとめたoverviewが報告されています。63.7%のレビューで対象となったアウトカム全体の改善が報告された一方、87.4%は方法論的な質が「critically low」と評価されていました。
つまり、運動療法の有用性を示す研究は多いものの、どの運動が誰に最適かについては、まだ慎重に考える必要があります。
変形性膝関節症は「軟骨がすり減ったから痛い」だけではありません
変形性膝関節症は、膝関節の関節軟骨や軟骨下骨などに変化が生じ、痛みやこわばり、関節可動域の低下、筋力低下などを伴うことがある疾患です。
一般的には、
「膝の軟骨がすり減って痛くなる病気」
と説明されることも多いと思います。
もちろん、軟骨や骨の変化は重要です。
しかし、実際の膝の痛みは、軟骨のすり減りだけでは説明できません。
レントゲンの変形と痛みは必ずしも一致しません
2024年の国内の疫学報告では、日本にはX線上の変形性膝関節症を有する人が多く存在する一方、その全員が膝の症状を感じているわけではなく、画像上の変形の程度と実際の症状が一致しないことがあるとされています。
また、X線上の変化がまだ少ない早期の段階でも、膝痛を感じる方がいます。
MRIを用いた調査では、早期の膝OAで、
- 半月板病変
- 骨髄病変
- 滑膜炎
- 軟骨病変
など、さまざまな変化が確認されています。
その中でも、半月板病変や滑膜炎は、膝症状との関連が報告されています。
そのため、
「レントゲンで変形しているから、この痛みは仕方がない」
「軟骨が減っているから、もう良くならない」
と単純に考える必要はありません。
画像所見だけでなく、
- どの動作で痛むのか
- 腫れはあるのか
- 膝はどこまで曲がる・伸びるのか
- 筋力はどうか
- どのように歩いているのか
といった身体機能も合わせて確認することが大切です。
なぜ変形性膝関節症に運動療法がすすめられるのでしょうか
運動療法というと、
「筋肉を鍛えること」
をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、目的は筋肉を強くすることだけではありません。
痛みの軽減
筋力強化などの運動療法は、変形性膝関節症の痛みを軽減する方法の一つとして用いられています。
筋力強化運動については、疼痛の軽減だけでなく、身体機能、日常生活動作、生活の質の改善なども報告されています。
身体機能や歩行能力の改善
変形性膝関節症では、痛みを避けることで活動量が減り、筋力や身体機能が低下していくことがあります。
運動療法では、筋力や関節の動きを保つだけでなく、
- 立ち上がる
- 歩く
- 階段を上り下りする
といった、日常生活に必要な動作を行いやすくすることも大切な目的です。
日常生活や生活の質を保つ
日本整形外科学会のガイドラインでも、運動療法には、鎮痛、身体機能、日常生活機能の改善が認められています。
つまり重要なのは、
「膝を鍛えること」ではなく、「その人が生活の中で困っていることを改善するために、必要な身体機能を整えること」
です。
どんな運動を行えばよいのでしょうか
変形性膝関節症に対する運動療法には、いくつかの種類があります。
筋力を保つ・高める運動
代表的なのは、大腿四頭筋など膝周囲の筋肉を鍛える運動です。
必要に応じて、股関節周囲の筋肉や体幹なども対象になります。
膝だけではなく、股関節や身体全体の機能が歩行や立ち上がりに影響することがあるためです。
ウォーキングなどの有酸素運動
ウォーキング、エアロバイク、水中運動なども選択肢になります。
2025年のBMJのネットワークメタ解析では、有酸素運動は痛みや身体機能など複数の項目で良好な結果を示しました。
ただし、
「有酸素運動が良い=全員たくさん歩けばよい」
という意味ではありません。
歩く距離や時間は、痛みや腫れ、歩き方、体力などを考慮して調整します。

膝の動きを保つ運動
膝が十分に曲がらない、あるいは伸びない状態では、歩行や立ち上がりにも影響します。
そのため、関節可動域を維持・改善するための運動やストレッチなどを行うことがあります。
バランスや動作を整える運動
筋力だけでなく、
- 立ち上がり
- 片脚での支持
- 歩行
- バランス
など、実際の生活動作につながる練習も行われます。
変形性膝関節症に対する運動療法には、関節可動域運動、筋力強化運動、有酸素運動、バランス運動などがあります。
大切なのは、
これらをすべて行うことではなく、自分に必要なものを選ぶことです。
「痛くても運動していい」は、痛みを我慢するという意味ではありません
今回の記事で、特に誤解してほしくない部分です。
運動療法がすすめられているからといって、
「痛みが強くても、そのまま続けた方がいい」
という意味ではありません。
運動中だけでなく、運動後に痛みや腫れが強くなっていないかも確認しながら、
- 回数
- 時間
- 負荷
- 動作の方法
などを調整します。
例えば、同じスクワットでも、運動の方法や負荷設定によって身体への負担は変わります。
ウォーキングも、10分歩く場合と1時間歩く場合では身体への負荷が異なります。
運動は段階的に進め、痛みや腫れが明らかに強くなる場合には、負荷や方法を見直します。
ですから、
「運動するか、休むか」の二択ではなく、今の状態で受け入れられる負荷に調整する
という考え方が大切です。
なお、「痛みが何点までなら大丈夫」「翌日こうなら問題ない」といった一律の数値基準を、今回の文献から決めることはできません。
同じ変形性膝関節症でも、必要な運動は人によって違います
変形性膝関節症という同じ診断名でも、身体の状態は一人ひとり違います。

例えば、
- 膝が十分に伸びない
- 膝を曲げにくい
- 太ももの筋力が低下している
- 股関節周囲の筋力が低下している
- 膝に腫れがある
- 歩くと身体が大きく左右に揺れる
- 階段で痛い
- 立ち上がるときだけ痛い
など、症状や身体機能はさまざまです。
膝OAの運動を考える際は、疼痛、筋力、可動域だけでなく、日常で困る動作まで含めて評価することが重要です。
また、膝OAでは関節内の状態や症状、身体機能が一人ひとり異なるため、診断名だけから画一的に運動を決めることには限界があります。
たとえば、膝を十分に伸ばせない方と、関節の動きは保たれていても筋力が低下している方では、優先して取り組む内容は異なります。
また、筋力は十分でも、歩き方によって膝の特定の場所へ負担が集中している場合には、動作そのものを見直した方がよいこともあります。
つまり、
「膝が痛いから、とりあえず太ももを鍛える」
だけでは十分でない場合もあります。
どこに問題があるのかを確認し、その方に必要な運動を選ぶことが大切です。
こんなときは、自己判断で運動量を増やす前に一度確認を
変形性膝関節症では運動療法が重要ですが、すべての膝痛を自己判断で運動してよいわけではありません。
特に、
- 急に強い痛みや大きな腫れが出た
- 膝が熱を持って大きく腫れている
- 短期間で大きく症状が変化している
といった場合には、
「変形性膝関節症だから」と自己判断せず、一度医療機関で状態を確認することが大切です。
急激な症状や短期間の大きな変化など、通常と異なる経過では、別の病態も含めて確認が必要な場合があります。
運動を続けることより、まず今の膝がどのような状態なのかを確認することが優先される場合もあります。
大切なのは、自分に合った運動を無理なく続けること
運動療法は、一度だけ頑張れば終わりというものではありません。
生活の中に無理なく取り入れ、身体の状態を確認しながら続けていくことが大切です。
国内の小規模研究では、理学療法終了6か月後に、疼痛や日常生活に関する指標だけでなく、膝伸展筋力や股関節外転筋力が低下していたことが報告されています。
対象者は15名と少ないため一般化はできませんが、改善した身体機能をその後どのように維持するかを考える材料になります。
大切なのは、
たくさん運動することではなく、今の自分に必要な運動を選び、無理なく続けられる方法を見つけることです。
E-Rehaでは、膝だけでなく身体全体の動きを確認します
E-Rehaでは、変形性膝関節症だからといって、膝だけを見て施術や運動を決めることはありません。
例えば、
- 膝の曲げ伸ばし
- 筋力
- 腫れ
- 痛みが出る動作
- 立ち上がり
- 歩行
- 股関節など周囲の関節
- 日常生活での身体の使い方
などを確認します。
そのうえで、
「なぜ今、この動作で膝に負担がかかっているのか」
を整理し、必要な施術や運動、セルフケアを考えていきます。
同じ変形性膝関節症でも、必要な対応は一人ひとり異なるからです。
「運動した方がいいと言われたけれど、何をすればいいのか分からない」
「自分で運動すると膝が痛くなるので不安」
「このまま歩けなくなってしまわないか心配」
そのような場合は、まず現在の身体の状態を確認するところから始めてみてください。
E-Rehaの施術やご利用の流れについては「初めての方へ」をご覧ください。
FAQ
膝が痛いときもウォーキングして大丈夫ですか?
ウォーキングも、変形性膝関節症に対する運動の一つです。
これまでの研究では、一般的なウォーキングなどの身体活動が、膝OAの構造的な進行につながるという一貫した結果は示されていません。
ただし、「歩けば歩くほどよい」わけではありません。
歩いた後に痛みや腫れが強くなる場合には、時間、距離、速度などを見直す必要があります。
まずは無理のない範囲から始め、運動中だけでなく運動後の膝の状態も確認しながら調整することが大切です。
スクワットは変形性膝関節症でもしていいですか?
スクワットも筋力を高める方法の一つです。
ただし、変形性膝関節症であれば全員に同じスクワットが適しているわけではありません。
運動の方法や負荷設定によって身体への負担は変わります。
痛みが出る場合には、
「スクワットはできない」と考えるのではなく、方法や負荷が今の状態に合っているか
を見直すことが大切です。
運動すると軟骨がさらにすり減りませんか?
「動くほど軟骨がすり減るのではないか」と不安になる方もいると思います。
これまでの研究では、変形性膝関節症に対する適切な運動が、軟骨をさらに傷めるという明確な根拠は示されていません。
一方で、どのような負荷でも問題ないという意味ではありません。
現在の症状や身体機能に合わせて、運動量や方法を調整することが大切です。
膝が腫れているときも運動していいですか?
膝OAでは、滑膜炎や関節水腫を伴うことがあります。
国内研究でも、滑膜炎や半月板病変などが膝症状と関連することが報告されています。
腫れの程度や原因によって対応は異なるため、急に大きく腫れた場合や痛みが強くなった場合には、自己判断で運動量を増やさず、状態を確認することが大切です。
運動は毎日した方がいいですか?
必ずしも、すべての運動を毎日行う必要はありません。
必要な頻度は、運動の種類、強度、症状、筋力、体力などによって異なります。
そのため、
「何回やったか」だけではなく、無理なく続けられ、運動後に症状が悪化しない量を考える
ことが大切です。
まとめ
変形性膝関節症では、膝が痛いからといって、身体を動かさない方がよいとは限りません。
運動療法は、痛み、身体機能、日常生活機能の改善を目的として、日本整形外科学会のガイドラインでも強く推奨されています。
一方で、
- 痛みの強さ
- 腫れ
- 膝の動き
- 筋力
- 歩き方
- 股関節など周囲の機能
- 普段の活動量
は一人ひとり異なります。
そのため大切なのは、
「とにかく運動すること」ではなく、「今の自分に必要な運動を、適切な負荷で続けること」です。
運動をした方がいいと言われたものの、
「何をすればいいのか分からない」
「運動すると痛くなる」
「自分の膝に合った運動を知りたい」
という場合には、一度身体の状態を整理してみることも大切です。
参考文献
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