腰痛は「この施術で良くなる」ではない、本当は評価が大切な理由

腰痛について調べると、
「ストレッチをした方がいい」
「体幹を鍛えれば良くなる」
「筋肉をほぐせばいい」
「骨盤を整えればいい」
など、さまざまな情報が出てきます。
実際、運動療法やストレッチ、徒手療法などが腰痛に対して役立つことはあります。
しかし、ここで注意したいのは、「腰痛」という言葉だけでは、その人の身体で何が起きているのかまでは分からないということです。
同じ腰痛でも、痛む場所や症状の出方、続いている期間、身体の動き、生活背景などは人によって異なります。
そのため、腰痛に対して最初から一つの方法を決めてしまうのではなく、まず状態を確認し、必要な方法を選び、その後の変化をもう一度確認することが大切です。
今回は、腰痛診療ガイドラインや国内外の研究をもとに、なぜ一つの施術方法を全員に当てはめないことが大切なのかを考えていきます。
腰痛は一つの状態ではありません
「腰が痛い」と聞くと、一つの症状のように感じるかもしれません。
しかし、腰痛は病名そのものではなく、腰部を中心に生じる症状の総称です。腰痛の背景には、脊椎や神経、筋肉などの運動器だけでなく、内臓や血管、心理社会的な要素など、さまざまな要因が関係することがあります。1)
また、腰痛診療では、まず医療的な評価が必要な状態を見逃さないことも重要とされています。2)

痛む場所や出方もさまざまです
実際に身体をみていると、「腰が痛い」と言われていても、指している場所は人によって異なります。
腰の中央付近を指す方もいれば、骨盤の周囲や臀部に近い場所を「腰」と表現される方もいます。
また、
- 前かがみになると痛い
- 身体を反らすと痛い
- 長く座っているとつらい
- 歩いていると症状が出る
- 朝起きたときに痛い
など、症状の出方もさまざまです。
つまり、「腰痛」という言葉だけで施術方法を決めるのは難しく、まずどこに、どのような症状が、どのような動作で出ているのかを整理する必要があります。
医療機関での評価が必要な腰痛もあります
腰痛の多くは重い病気が原因ではありませんが、中には医療機関での評価を優先した方がよい状態もあります。
たとえば、
- 発熱を伴う
- 原因の分からない体重減少がある
- 安静にしていても強い痛みが続く
- 強い外傷のあとから痛みがある
- 麻痺が進行している
- 排尿や排便の異常がある
などの場合には、自己判断で施術や運動を続けるのではなく、医療機関での評価が必要になります。1)2)
こうした点を含めて確認することも、腰痛をみるうえで大切な評価の一つです。
急性と慢性でも考え方は変わります
腰痛は症状が続いている期間によっても分類されます。
一般的には、
- 4週間未満:急性腰痛
- 4週間以上3か月未満:亜急性腰痛
- 3か月以上:慢性腰痛
と分けられます。1)
急性腰痛と慢性腰痛では、同じ運動療法でも研究結果や考え方が同じとは限りません。
急性の非特異的腰痛に対する運動療法については、短期間で臨床的に重要な効果が明確に示されているとはいえず、Evidenceの確実性も非常に低いと報告されています。10)
一方、慢性腰痛では運動療法が治療の一つとして広く用いられていますが、運動の種類や量、身体の状態などを考えながら行う必要があります。4)9)
腰痛に関わる要素は人それぞれ
腰痛は、身体の一つの部位だけで説明できるとは限りません。
近年では、腰痛を身体的要因だけでなく、心理面や社会的背景も含めた「生物心理社会モデル」で考えることが重視されています。3)6)
たとえば、
- 身体の動き
- 筋力や筋持久力
- 関節可動域
- 日常生活で繰り返す動作
- 仕事
- 運動習慣
- 睡眠
- 痛みに対する不安
- 症状が続くことへの心配
などが複雑に関係する場合があります。
そのため、近年の理学療法では、すべての腰痛を一つの方法で扱うのではなく、症状や特徴に応じて分類したり、リスクに応じて対応を変えたりする考え方も検討されています。6)
ただし、「この分類をすれば必ず良くなる」という意味ではありません。
大切なのは、腰痛を一つの原因や一つの施術方法だけで考えないことです。
運動療法にも一つの正解はありません
腰痛に対する運動療法には、さまざまな方法があります。
たとえば、
- ストレッチ
- 体幹筋トレーニング
- モーターコントロールエクササイズ
- 有酸素運動
- Pilates
- 特定方向への運動
- 一般的な筋力トレーニング
などです。
慢性腰痛を対象とした研究では、運動療法により痛みの軽減が期待できることが示されていますが、運動の種類や量によって結果に違いがあり、Evidenceの確実性にも幅があります。9)
つまり、「腰痛なら全員この運動をすればよい」という結果ではありません。
運動そのものが悪いわけではなく、どの運動を、どのような目的で行うのかを考える必要があります。
慢性腰痛に対する運動療法では、患者さんの状態に合わせて運動を選び、専門職による指導やフォローを行うことの重要性も指摘されています。4)
ストレッチや徒手療法も選択肢の一つ
ストレッチも腰痛に対してよく行われる方法の一つです。
しかし、ストレッチングに関するシステマティックレビューでは、対象となる運動器疾患によって結果が異なり、すべての症状に同じような効果が得られるわけではありません。8)
徒手療法やマッサージなどについても同様です。
それらの方法が適している方もいますが、施術方法そのものを先に決めるのではなく、その方の状態や目的を確認したうえで選択することが重要です。
近年の腰痛リハビリテーションでは、理学療法士による詳細な評価を行い、必要に応じて徒手療法やストレッチ、体幹筋トレーニングなどを組み合わせることが紹介されています。5)
一方で、「この原因にはこの運動」というような原因別の運動療法については、まだ十分なEvidenceが確立していない部分もあります。5)
施術を決める前に評価する

E-Rehaで大切にしているのは、施術方法を先に決めるのではなく、評価した結果として方法を選ぶことです。
たとえば腰痛であれば、
- どこが痛むのか
- どのような動作で症状が出るのか
- 身体を曲げる・反らす動きはどうか
- 股関節など他の部位の動きはどうか
- 筋力や身体の使い方はどうか
- 日常生活でどのような負担がかかっているのか
などを確認していきます。
そのうえで、
「今は動きを出した方がよいのか」
「筋力を高めた方がよいのか」
「まず症状を落ち着かせた方がよいのか」
といったことを考えながら、必要な方法を選びます。
評価は「原因を一つに決める作業」ではありません。
現在の身体の状態を整理し、次に何をするべきかを考えるためのものです。
再評価が大切な理由

施術や運動を行ったあとには、もう一度身体の状態を確認します。
再評価には、大きく二つの意味があります。
一つは、行った方法にどのような反応があったのかを見るためです。
たとえば、
- 痛みの強さ
- 動作時の症状
- 身体の動き
- 歩きやすさ
- 前屈や後屈
などに変化があったかを確認します。
もう一つは、他の要素について考える必要があるかを判断するためです。
ある方法を行って変化が少なければ、
「別の要素が関係しているのではないか」
「別のアプローチを考えた方がよいのではないか」
と考える材料になります。
逆に、ある方法で症状が変化したとしても、それだけで「そこが腰痛の原因だった」と断定できるわけではありません。
一つの反応を次の判断材料として使うことが大切です。
症状の変化に合わせて評価する
身体の状態は、最初から最後まで同じとは限りません。
臨床では、最初に最も強く感じていた症状が軽減すると、それまで目立たなかった別の症状や動きの問題が分かりやすくなることがあります。
これはすべての方に起こるという意味ではありませんが、症状が変化すれば、確認するポイントも変わることがあります。
そのため、
評価
→ 方法を選ぶ
→ 実施する
→ 再評価する
→ 必要に応じて方法を変える
という流れが重要になります。
最初に決めた施術方法をずっと続けるのではなく、身体の変化に合わせて考え直していくことが必要です。
何をするかより、「なぜそれをするか」
腰痛に対して、
「ストレッチをする」
「筋力トレーニングをする」
「徒手療法をする」
という方法そのものはもちろん大切です。
ただ、それ以上に重要なのは、
「なぜ今、その方法を行うのか」
ということです。
同じストレッチでも、ある方には必要で、別の方には優先度が低いことがあります。
同じ筋力トレーニングでも、目的によって内容は変わります。
方法だけを真似するのではなく、
「現在の身体のどこを見て」
「何を変えるために」
「この方法を選んでいるのか」
まで考えることが大切です。
E-Rehaが大切にしていること
E-Rehaでは、腰痛に対して一つの施術方法を最初から決めているわけではありません。
基本的には、
評価
↓
状態の説明
↓
必要な施術・運動
↓
セルフケア
↓
再評価
という流れで身体を確認しています。
現在の状態をできるだけ分かりやすく整理し、
「なぜこの施術を行うのか」
「なぜこの運動が必要なのか」
を説明したうえで進めることを大切にしています。
そして、施術や運動を行ったあとは、その反応を確認しながら次の方法を考えます。
一つの方法に身体を合わせるのではなく、身体の状態を見ながら方法を選んでいくことがE-Rehaの基本的な考え方です。
腰痛の状態を一度整理してみたい方へ
腰痛が続いていて、
「自分の場合は何が関係しているのか分からない」
「いろいろ試したけれど変化が少ない」
という方は、まず現在の状態を整理するところから始めてみるのも一つです。
E-Rehaの腰痛に対する考え方や施術の流れについては、腰痛の症状ページで詳しくご案内しています。
まとめ
腰痛には、運動療法、ストレッチ、徒手療法など、さまざまな方法があります。
どれか一つが悪いというわけではありません。
一方で、同じ「腰痛」でも症状や身体の状態は人によって異なるため、一つの方法を全員に当てはめるのは適切とは限りません。
大切なのは、
施術方法を先に決めるのではなく、まず現在の状態を確認すること。
そして、
必要な方法を選び、その後の変化を再評価すること。
「何をするか」だけではなく、「なぜそれをするのか」を考えることが、腰痛への対応では重要です。
FAQ
腰痛には筋トレとストレッチのどちらがいいですか?
どちらか一方がすべての方に適しているわけではありません。
身体の動き、筋力、症状が出る動作、腰痛が続いている期間などによって、必要な内容は変わります。
まず現在の状態を確認したうえで、目的に合った方法を選ぶことが大切です。
マッサージや徒手療法だけでもいいですか?
徒手療法やマッサージが症状の変化につながる方もいます。
ただし、それだけで十分かどうかは人によって異なります。
身体の状態によっては、運動療法やセルフケア、日常生活での工夫などを組み合わせることもあります。
痛みがあるときに運動してもいいですか?
腰痛の状態によって異なります。
強い痛みがある場合や、麻痺・排尿排便障害など医療機関での評価が必要な症状がある場合には、無理に運動を行わず、まず医療機関への相談が必要です。
一方で、すべての腰痛で安静が必要というわけでもありません。
現在の症状や経過を確認したうえで判断することが大切です。
自分に合った施術や運動はどうやって判断しますか?
まず症状の出方や身体の動き、筋力、生活で困っている動作などを確認します。
その結果をもとに施術や運動を選び、実施後にもう一度身体の状態を確認します。
一度の評価で決め切るのではなく、反応を見ながら調整していくことが大切です。
参考文献
1)土井田 稔:腰痛のメカニズム. 臨牀と研究 99(12): 1411-1415, 2022.
2)日本整形外科学会・日本腰痛学会監修:腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版. 南江堂, 東京, 2019.
3)遠藤達矢, 白土 修, 岩渕真澄, 佐久間洋太, 伊藤俊一:腰痛に対するリハビリテーション. MB Orthopaedics 36(9): 90-101, 2023.
4)陣内裕成, 松平 浩:慢性腰痛の運動療法. ペインクリニック 39(3): 343-353, 2018.
5)本郷道生, 齊藤 明, 粕川雄司, 宮腰尚久:腰痛に対する運動療法における整形外科医と理学療法士との連携:その現状と課題. Journal of Spine Research 16(6): 837-842, 2025.
6)三木貴弘, 高﨑博司, 寒川美奈, 竹林庸雄:生物心理社会モデルに基づく非特異的腰痛に対する理学療法の進化. Journal of Spine Research 12(6): 825-830, 2021.
7)松平 浩:慢性腰痛に対する多面的リハビリテーションとその手法―「痛みの多層モデル」を踏まえた治療戦略―. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 60(7): 605-614, 2023.
8)森山英樹, 増子 潤, 金村尚彦, 木藤伸宏, 小澤淳也, 今北英高, 高栁清美, 伊藤俊一, 磯崎弘司, 出家正隆:運動器疾患に対するストレッチングの効果―システマティックレビューとメタアナリシスによる検討―. 理学療法学 38(1): 1-9, 2011.
9)Liang Z, Tian S, Wang C, et al.:The Best Exercise Modality and Dose for Reducing Pain in Adults With Low Back Pain: A Systematic Review With Model-Based Bayesian Network Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther 54(5): 315-327, 2024.
10)IJzelenberg W, Oosterhuis T, Hayden JA, Koes BW, van Tulder MW, Rubinstein SM, de Zoete A:Exercise therapy for treatment of acute non-specific low back pain. Cochrane Database Syst Rev 2023(8): CD009365, 2023.
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