脊柱管狭窄症ではなぜ歩くとつらくなる?運動療法と歩行の考え方

脊柱管狭窄症による歩行時の足の痛みやしびれをイメージした、歩いている途中で足のつらさを感じる高齢男性

「最初は歩けるけれど、しばらくすると足が痛くなってくる」

「足がしびれて、長い距離を歩けない」

「座って少し休むと楽になるけれど、また歩くと症状が出てくる」

腰部脊柱管狭窄症では、このような歩行時の痛みやしびれに悩まされることがあります。

歩くことで症状が出ると、

「なるべく歩かない方がいい?」

「運動をして悪化する?」

「治すには、どんな運動をしたらいいの?」

と不安になる方も多いのではないでしょうか。

腰部脊柱管狭窄症に対する運動療法は、診療ガイドラインでも提案されています。

しかし、「どの運動が最もよいのか」については、現在のところ明らかになっていません。

では、何を基準に運動を考えればよいのでしょうか。

この記事では、なぜ脊柱管狭窄症では歩くと痛みやしびれが出るのか、姿勢や歩行との関係、運動療法について現在分かっていることを、診療ガイドラインや研究報告をもとに理学療法士が解説します。

「脊柱管狭窄症」と聞くと、

「神経の通り道である脊柱管が狭くなっている病気」

というイメージを持つ方が多いと思います。

腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管や神経根管、椎間孔などが狭くなることで、下肢の痛みやしびれ、歩行障害など、さまざまな症状を呈する病態の総称とされています。

ただし、重要なのは脊柱管が狭くなっている人が、すべて同じ状態ではないということです。

腰部脊柱管狭窄症は疾患としての明確な定義が国際的にも定まっておらず、多様な病態が含まれることが指摘されています。病型も神経根型、馬尾型、混合型などに分けられ、症状の現れ方も一様ではありません。

つまり、「脊柱管狭窄症だから、みんな同じ症状が出る」わけではありません。

歩くと足の痛みやしびれが現れ、少し休むと楽になり、再び歩けるようになる間欠性跛行の流れを示したイラスト

腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状の一つに、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」があります。

間欠性跛行とは、立ったり歩いたりすると殿部や下肢に痛み・しびれなどが現れ、休むことで再び歩けるようになる歩行障害のことを言います。

腰部脊柱管狭窄症では、座ったり身体を前に曲げたりすることで症状が軽減することもあります。

そのため、

「歩き始めは大丈夫なのに、しばらくすると足がつらくなる」

「少し休むとまた歩ける」

といった症状がみられることがあります。

腰を反らす姿勢で症状が強くなる?

特に神経根型では、腰椎の前弯が強くなることで、椎間関節や神経根に力学的なストレスが加わり、脊柱管腔も狭くなります。

そのため、体幹を後ろへ反らす動きで症状が悪化し、前へ曲げることで軽減することが多いと報告されています。

つまり、「歩くと痛い」という症状だけを見るのでは不十分です。

歩いているときに身体がどのような姿勢になっているのか。

どのくらいの時間や距離で症状が出るのか。

座ったり姿勢を変えたりすると、症状がどう変化するのか。

こうした症状が現れる条件も大切な情報になります。

「姿勢が関係するのであれば、歩き方にも何か特徴があるのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

実際に、腰部脊柱管狭窄症患者の歩行中の身体の動きを調べた研究があります。

三浦らは、手術目的で入院した腰部脊柱管狭窄症患者10名を対象に、静止して立っているときの姿勢や、歩行中の脊柱・骨盤の動きと下肢痛との関連を調査しました。対象者の平均年齢は66.6歳でした。

その結果、静止立位での腰椎前弯や、歩行中の脊柱の伸展・回旋、胸椎の動きなどと下肢痛との関連が報告されています。

ただし、この研究の対象者は10名と少なく、「このような歩き方をしているから痛くなった」という因果関係を証明した研究ではありません。

そのため、

「この姿勢が悪いから痛い」

「歩き方を変えれば必ず改善する」

とまでは言えませんが、歩いているときに身体がどのように動いているのかは、歩行時の症状を考える上でとても重要な情報になります。

歩くことで痛みやしびれが出ると、

「なるべく安静にしていた方がいいのでは?」

と考えてしまうかもしれません。

しかし、腰部脊柱管狭窄症に対する運動療法については、これまで複数の研究が行われています。

「運動療法」は推奨

日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会による『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)』では、腰部脊柱管狭窄症に対して、運動療法を行うことを提案されています。

また、専門家の指導下で行う運動療法について、セルフトレーニングと比較して、疼痛や身体機能、ADL、QOLの改善に有効であることを示した研究も紹介されています。

つまり、

「歩くと症状が出る=運動をしない方がよい」

と単純に考える必要はありません。

一方で、ガイドラインでは最適な運動療法の種類については明らかになっておらず、長期的な効果についても十分なエビデンスがないとされています。

腰部脊柱管狭窄症では、痛みの強さだけでなく、

「どのくらい歩けるのか」

が日常生活に大きく影響します。

浅田らは2023年、腰部脊柱管狭窄症の疼痛と歩行障害に対する理学療法の効果について、システマティックレビューとメタアナリシスを報告しています。

医学中央雑誌、PubMed、PEDroなど5つのデータベースを検索し、最終的に4件のランダム化比較試験(RCT)が採用されました。

その結果、複合的な理学療法には、背部痛・下肢痛や連続歩行距離に対する有効性を示す限定的なエビデンスが認められるとされています。

ただし、「運動をすれば必ず改善する」という意味ではなく、注意も必要です。

この研究では、採用された研究数が少ないことやサンプルサイズの小ささ、バイアスリスクなどがあり、著者ら自身もエビデンスの強さは十分ではないとしています。

現在の研究からは、運動療法・理学療法には改善の可能性がある一方で、その効果や方法については、まだ分かっていない部分もあると捉えるのが適切です。

高齢者がストレッチや下肢運動、歩行など複数の運動に取り組んでいる様子を示したイラスト

ここが最も気になるところではないでしょうか。

インターネットや動画を見ると、

「脊柱管狭窄症にはこのストレッチ」

「この筋肉を鍛えればいい」

「ウォーキングをしましょう」

など、さまざまな情報が出てきます。

しかし、現在の研究からは、

「脊柱管狭窄症には、この運動が最もよい」

とは断定されている運動はありません。

さまざまな方法の組み合わせ

浅田らのレビューで採用された研究では、ストレッチや筋力強化、サイクリング、腰椎屈曲を促す運動、トレッドミルなど、さまざまな方法が用いられています。

また、複数の方法を組み合わせた介入での報告が多く、その中のどの運動が、どの程度効果をもたらしたのかを切り分けることはできないというのが現状です。

この文献著者も、複合的介入に含まれる特定の方法の効果については明らかになっていないとしています。

つまり、

「脊柱管狭窄症と診断されたから、とりあえずこのストレッチをしておけばいい」

というほど単純ではありません。

では、何を基準に運動やリハビリを考えればよいのでしょうか。

ここが、今回の記事で最なポイントになります。

ここまで紹介してきた研究を整理すると、

  • 姿勢によって症状が変化することがある
  • 歩行中の身体の動きと下肢痛との関連も報告されている
  • 運動療法には一定の効果が期待されている
  • しかし、最適な運動の種類は明らかになっていない
  • 同じ腰部脊柱管狭窄症でも、病型や症状は異なる

ということが分かります。

このように、人によって症状も変化し、運動の効果は期待できるが、確定した運動がない状況では、

「何をするか」よりも「どう評価するか」がとても大切になります。

同じ「歩くと痛い」でも、状態は同じとは限らない

たとえば、同じ「歩くと足が痛くなる」という訴えでも、

「5分ほど歩くと症状が出る」

「立っているだけでも症状が出る」

「前かがみになると楽になる」

「座らないと症状が軽減しない」

など、症状の現れ方は様々です。

さらに、症状の場所や性質、歩行時の姿勢や身体の動き、身体機能なども人によって異なります。

北村らの報告でも、腰部脊柱管狭窄症のフィジカルアセスメントでは、病型を意識し、問診で得られた情報をもとに身体所見を確認していくことが重視されています。

「何の運動をするか」を決める前に、まず、

なぜ、その人は歩くと症状が出るのか。

そこを考えることがとても重要です。

もう一つ重要なのが、MRIなどの画像所見です。

腰部脊柱管狭窄症では、MRIによって脊柱管の狭窄などを確認することがあります。

もちろん、画像検査は診断や状態を確認するうえで重要な情報です。

一方で、MRI上の脊柱管狭窄は加齢に伴って増加するものの、画像上の狭窄と実際の症状は必ずしも一致しなかったという報告があります。

これは、「MRIは意味がない」ということではなく、

画像だけを見ても、その人がなぜ歩くとつらいのかをすべて説明できるとは限らないということです。

画像所見に加えて、

「どのくらい歩くと症状が出るのか」

「どの姿勢で症状が強くなるのか」

「座ったり前かがみになったりするとどう変化するのか」

「実際にどのように歩いているのか」

「どのような身体機能の特徴があるのか」

などを合わせて確認することで、身体の状態をより詳しく整理できます。

腰部脊柱管狭窄症の中でも、馬尾型では両側の殿部・下肢症状に加えて、会陰部の異常感覚などが現れることがあります。

また、狭窄が強い場合には膀胱直腸障害が生じることも報告されています。

そのため、両脚に強い症状がある、会陰部に異常な感覚がある、排尿や排便に変化があるといった場合には、自己判断で運動を続けるのではなく、まず医療機関で状態を確認することが大切です。

E-Rehaでは、

「脊柱管狭窄症だから、この施術」

「脊柱管狭窄症だから、この運動」

と診断名だけで最初から方法を決めるのではなく、

「なぜ、この方は歩くと症状が出るのか?」

を考えることを大切にしています。

まず、どのような場面で症状が出るのかを確認した上で、姿勢や動作、歩行、身体機能などを確認し、現在の身体の状態や考えられる問題をできるだけ分かりやすく説明します。

そこから、その方の状態に合わせて施術や運動を行い、再び身体の状態を確認していきます。

「とりあえずストレッチをする」

「とにかく歩く練習をする」

のではなく、まず身体の状態を確認し、その結果から必要な方法を考える。

これは脊柱管狭窄症に限らず、E-Rehaが大切にしている考え方です。

[E-Rehaの脊柱管狭窄症に対する施術・評価について詳しく見る]

腰部脊柱管狭窄症では、立ったり歩いたりすることで下肢の痛みやしびれが現れ、座ったり身体を前に曲げたりすると症状が軽減することがあります。

運動療法については、診療ガイドラインでも行うことが提案されており、複合的な理学療法による痛みや連続歩行距離への効果も報告されています。

一方で、現在の研究では、

「どの運動が最もよいのか」

までは明らかになっていません。

また、腰部脊柱管狭窄症にはさまざまな病型があり、画像上の狭窄と実際の症状が必ずしも一致しないこともあります。

だからこそ、

「脊柱管狭窄症には何の運動がいいのか?」

だけではなく、

「自分の場合、なぜ歩くと症状が出るのか?」

を掘り下げ、症状の現れ方や姿勢、動作、歩行などを確認し、身体の状態を整理したうえで、その人に必要な方法を考えていくことが重要です。

大切なのは、「何をするか」の前に「どう評価するか」です。

「歩くと足が痛くなり、長い距離を歩けない」

「休むと楽になるけれど、また歩くと症状が出る」

「脊柱管狭窄症と言われたけれど、自分は何をしたらいいのか分からない」

このようなお悩みがある方はぜひお気軽にご相談ください。

E-Reha(イーリハ)では、理学療法士・運動器認定理学療法士が症状について詳しく姿勢や動作、歩行、身体機能などを確認します。

その結果を分かりやすく説明したうえで、一人ひとりの状態に合わせた施術や運動をご提案しています。

まずは、「なぜ自分は歩くとつらいのか」を整理するところから始めてみませんか?

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E-Reha(イーリハ)

〒880-0844 宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1

宮崎市のリハビリ整体院、ゴルフ整体

参考文献

1)日本整形外科学会, 日本脊椎脊髄病学会 監修:腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版. 南江堂, 2021.

2)浅田啓嗣ら:腰部脊柱管狭窄症における疼痛・歩行障害に対する理学療法の効果―システマティック・レビューとメタアナリシス―. 徒手理学療法 23(1): 41-49, 2023.

3)北村拓也, 佐藤成登志:腰部脊柱管狭窄症患者の理学療法におけるフィジカルアセスメントのポイント. 理学療法 42(1): 22-31, 2025.

4)三浦拓也ら:脊柱管狭窄症患者の下肢痛は体幹や骨盤の静的, 動的アライメントと関連するか. 福島県理学療法学 2: 23-28, 2018.

5)岩本俊彦:加齢と腰部脊柱管狭窄症. Geriatric Medicine(老年医学) 58(4): 344-345, 2020.

Q1. 脊柱管狭窄症でも運動をして大丈夫ですか?

A. 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインでは、運動療法を行うことが提案されています。

ただし、すべての方に同じ運動が適しているわけではなく、最適な運動の種類も明らかになっていません。

症状の出方や身体の状態を確認しながら、運動の内容や負荷を考えることが大切です。

Q2. 脊柱管狭窄症にはウォーキングがいいですか?

A. 今回参考にした研究だけから、「脊柱管狭窄症にはウォーキングが最もよい」と結論づけることはできません。

複合的な理学療法による連続歩行距離への効果は報告されていますが、最適な運動方法については明らかになっていません。。

Q3. MRIで脊柱管が狭いと言われたら、それが痛みの原因ですか?

A. 画像所見は重要な情報の一つですが、画像上の脊柱管狭窄と実際の症状が必ずしも一致しないことも報告されています。

画像だけでなく、症状の現れ方や姿勢、動作、歩行なども合わせて確認することが大切です。

Q4. 歩くと足が痛くなる場合は、歩かない方がいいですか?

A. すべての方に対して「歩いた方がよい」「歩かない方がよい」と一律に判断することはできません。

どの程度歩くと症状が出るのか、どのような姿勢で変化するのかなどを確認し、その方の状態に合わせて考える必要があります。

店舗名E-Reha(イーリハ)
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