「寝相」と五十肩の関係性〜理学療法士が教える対策について〜

「夜中に肩の激痛で目が覚める」
「寝返りの度に激痛が走る」……。
四十肩・五十肩でお悩みの方はこのような経験があるのではないでしょうか?
「歳のせい」などと考えがちですが、実は最新の医学研究によって、四十肩・五十肩の発生リスクと「寝相」の関係性が指摘されています。
今回は、理学療法士の視点から、文献に基づいた「寝相」との関係や、今夜から改善できるポイントを解説していきます。
そもそも「五十肩(肩関節周囲炎)」とは何か?

「五十肩」は俗称で、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、さらに関節が固まった状態を「凍結肩」と呼びます。
40〜60歳代に好発し、明らかな原因がないにもかかわらず肩の疼痛と関節可動域制限を主症状とする疾患群の総称になります。
なぜ起こるのか?
肩の関節は、体の中で最も動く範囲が広い関節です。
そのため、構造は非常に複雑で、筋肉や関節包などの関節を構成する軟部組織の影響を非常に強く受ける関節になります。
加齢とともに筋肉(腱板)や関節を包む袋(関節包)を構成するコラーゲンなどが変性し、脆弱化(ぜいじゃくか)していきます。
そこへ日常生活の微小なストレスが加わることで炎症が起きてくると言われています。
肩関節周囲炎の3つのステージ
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)は、時間の経過とともに大きく3つのステージに分類されます。
| 病期 | 別名 | 特徴的な病態・症状 |
| 炎症期 | Freezing phase | 炎症が強く、安静時痛や夜間痛が激しい。徐々に関節が硬くなり始める。 |
| 拘縮期 | Frozen phase | 激しい痛みは落ち着くが、関節包の線維化が進み、全方向への可動域制限が顕著になる。 |
| 寛解期 | Thawing phase | 線維化した組織が徐々に伸張性を取り戻し、可動域が回復していく時期。 |
典型的な3つの症状
肩関節周囲炎にはさまざまな症状が見られますが、多くの方が経験する症状が3つあります。
- 疼痛(とうつう): 何もしなくても痛い(安静時痛)、肩を動かした時、特に腕を上げる際の鋭い痛み(運動時痛)。
- 夜間痛(やかんつう): 寝ている時にズキズキと痛む。睡眠障害を招くとがある。
- 可動域制限: 手が上がらない、後ろに回らない(結帯動作)、髪を洗えないなどの肩の動きの制限。
これらの特徴的な症状のうち、夜間痛に関しては、痛くて眠れない、寝返りをするたびに痛みが出るなど、睡眠障害に繋がることもあります。
就寝姿勢と四十肩の関係性

私たちは人生の約3分の1の時間を睡眠に費やしています。
これまで「使いすぎ」や「老化」とが原因と言われてきた五十肩ですが、研究により、就寝時の物理的な環境が発症に大きく関与していることが報告されています。
睡眠中という「無意識の時間」に肩にかかる負担が蓄積され、肩関節にダメージが加わることがあります。
① 「良すぎる寝相」が肩を壊す?
本来、人は一晩に20〜30回ほどの寝返りを打つことで、体圧を分散させています。
寝返りには、特定の部位に体重がかかり続けるのを防ぎ、血液循環を促す役割があります。
しかし、寝返りが減少すると、肩関節周囲の組織(皮下組織や筋肉)に自分の体重による圧力が長時間かかり続けます。
加齢などで血管が硬くなっている中高年では、この持続的な圧迫によって組織が酸欠・栄養不足(血行障害)に陥ってしまい、炎症が引き起こされてしまいます。
寝相が良すぎる、つまり寝返りが少ない状況は、体への負担を増やす原因にもなってしまうのです。
② 「側臥位(横向き寝)」のメカニズム
梅木らの研究データでは、四十肩患者の58%が「側臥位中心で寝相が良い(寝返りが少ない)」と回答していることが報告されています。
横向きで寝ると、下側になった肩関節周囲の皮膚、筋肉、腱などに継続した圧迫が加わり続け、血行障害、神経
障害、加齢に伴う変化などにより肩関節周囲炎を発症しやすくなってしまいます。
③ 「低い枕」が及ぼす悪影響
低い枕を使用している人に四十肩の発症が多いという報告もされています。
枕が低いと、横向きになった際に頭の重さ(体重の約10%)を適切に逃すことができず、下側となった肩への荷重が増大するため、さらに圧迫を強めやすくなってしまいます。
頭の重さを適切な姿勢で分散してくれるような枕の高さが大切になります。
「夜間痛」と睡眠障害の悪循環
肩関節周囲炎の方で、夜間痛がある方と少ない方がいます。
夜間痛がある方では、そうでない方と比べて睡眠の質、入眠時間、睡眠効率、睡眠困難の4項目が悪かっったことが報告されています。
持続した痛みが睡眠時の入眠・睡眠困難または睡眠効率の低下を引き起こし、睡眠障害に繋がり、日中の覚醒にも影響を及ぼすとされているため、肩関節周囲炎の方の睡眠管理は非常に重要とされています。
理想的な「いい寝相」と、痛みを防ぐポジショニング
肩に最も負担をかけない就寝姿勢は「仰向け(仰臥位)」になります。
梅木らの報告では、四十肩患者のうち、横向き(側臥位)で中心で寝ると答えた人が58%だったのに対し、仰向け中心で寝ている人は12%と、圧倒的に仰向けで寝ている人の方が四十肩の割合が少なくなっています。
仰向けは体重が背中全体に分散され、肩関節もニュートラルな位置に保たれるため、横向き(側臥位)と比べると、肩の血流が阻害されにくい就寝姿勢になります。
ただし、一晩に20〜30回ほどの寝返りを打ち、体圧を分散させていくことが理想のため、肩に負担のかかりにくいポジショニングを取りつつ、適度に寝返りが行えるように就寝環境を整えていくことも非常に重要です。
肩を守る「ポジショニング」のポイント

- 肘の下にサポート: 仰向けで寝る際、肘の下に薄いタオルを敷いて肩を少し浮かせる(求心位に保つ)と、夜間のズキズキとした痛みが和らぎやすくなります。
- 枕の高さを調整: 横を向いた時に、背骨が床と並行になる高さの枕を選び、下側の肩への圧迫を軽減することができます。また、仰向けの際にも頭から体のラインができる限り真直ぐになることが理想のため、枕の中心部が仰向けにあった高さ、左右両サイドが横向きの高さに合わせられる枕をお勧めします。
- マットレスの硬さを調整:ベッドや布団の硬さが柔らかすぎると寝返りがしにくくなります。逆に硬すぎる場合は肩への荷重負担が増える原因にもなるため、それぞれの体型や体重などに合わせて、マットレスの硬さを適切なものに合わせることが重要です。
- 抱き枕の活用: 横向きで寝る際に、抱き枕を使用することで、上側の腕を重さを支えてくれるため、肩への負担を軽減することができます。
まとめ
「寝相」と「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」には密接な関係があり、特に寝返りの少なさ・横向き中心の就寝姿勢・枕の高さが肩への負担を大きく左右します。 普段のリハビリだけでなく、無意識の時間である睡眠中の姿勢が、血行障害や組織の炎症を引き起こし、発症や悪化の一因となる可能性があるため、肩にとって負担の少ない睡眠環境を整えてあげることは、四十肩の予防や改善にはとても大切になってきます。
夜間痛や睡眠の質の低下を放置すると、回復の遅れや慢性化にもつながるため、早めの対策が大切です。
もし「夜中の肩の痛みがつらい」「自分に合った寝方がわからない」と感じている方は、専門家による評価とアドバイスを受けることをおすすめします。
E-Reha(イーリハ)では、運動器認定理学療法士が、肩関節周囲炎(五十肩)に対して、痛みや炎症の状態、可動域や筋力、姿勢など、さまざまな専門的評価を行い、問題点の把握を行なっています。
施術だけでなく、理学療法士として視点から、就寝環境のなどに関するアドバイスなどもさせていただいています。
もし、肩の痛みや動かしにくさなどでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
E-Reha(イーリハ)
〒880-0844 宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1
宮崎市のリハビリ整体院、ゴルフ整体
参考文献
1)梅木茂宜, 中井菜穂子: 四十肩の原因は就寝時の側臥位中心の寝相. 臨牀と研究 99(10): 1256-1259, 2022.
2)烏山昌起 他: 肩関節周囲炎患者の夜間痛と睡眠障害の関連性について. 理学療法福岡 (35): 94-98, 2022.
3)今井晋二: 凍結肩(肩関節周囲炎). MB Orthopaedics 37(10): 126-131, 2024.
4)松下健, 田中誠也: 理学療法適応の肩関節周囲炎における痛みの破局的思考と臨床的特徴との関連. 慢性疼痛 42(1): 24-31, 2023.
5)春名匡史, 立花孝:肩関節周囲炎に対する理学療法診断の進め方. 理学療法 38(1): 39-46, 2021
FAQ
Q:痛い方の肩を下にして寝てもいいですか?
A: 痛い側を下にすると、圧迫によって血流が悪化し痛みが増す可能性があります。できるだけ避け、反対側や仰向けで寝るようにしましょう
Q:横向きで寝るのは絶対にダメですか?
A: 横向き寝(側臥位)が必ずしも悪いわけではありませんが、肩への圧迫が長時間続くことが問題です。横向きで寝られる際も、抱き枕を使用するなどして、負担を軽減する工夫が重要です。寝返りを行い、長時間肩への負担がかかり続けないように注意してみてください。
Q:寝返りはどのくらい必要ですか?
A. 一般的に、人は一晩に20〜30回程度の寝返りを打つとされています。寝返りは血流を促し、特定部位への負担を分散する重要な役割があります。
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