背中に手が回らない…結帯動作の激痛と「骨のズレ」

「エプロンの紐を結ぼうとしたら、肩にズキッと激痛が走る」
「下着の着脱や、ズボンの後ろポケットに手を伸ばすのがつらい…」
「夜、痛む方の肩を下にして寝ると、痛みで目が覚めてしまう」
日常生活の何気ないしぐさだからこそ、背中に手を回せないストレスや、それに伴う激しい痛みは、精神的にも大きな負担になります。
このように手を背中に回す動きは、専門的には「結帯動作(けったいどうさ)」と呼ばれます。
実はこの結帯動作は、五十肩(専門的には「肩関節周囲炎」)やその他の肩関節疾患において、最も制限されやすく、かつ最後まで痛みが残りやすい動作の一つとして知られています。
なぜ背中に手を回そうとすると、これほど鋭い激痛が走るのでしょうか?
本記事では、最新の研究をもとに、その科学的な原因と、痛みを長引かせないための適切なリハビリの視点について、理学療法士の立場から詳しく解説していきます。
五十肩における「結帯動作」の特徴
肩の関節(肩甲上腕関節)は、肩を上げたり、回したり、捻ったりなど様々な動きが行える、体の中で最も大きな範囲を動かせる関節になります。
この肩関節の構造に関して、土台となる肩甲骨のくぼみ(関節窩)に対して、動く側である上腕骨頭の大きさが「4分の1程度」しかなく安定性が少ないという特徴があります。
そのため、周囲の筋肉や関節包(関節を包む袋)が、腕の骨を正しい位置(求心位)にぴったりと保ちながらスムーズに回転させることが非常に重要で、肩関節周囲のこのような機能が働くからこそ、私たちは腕を痛みなく自由に動かすことができています。
しかし、肩に炎症や拘縮(こうしゅく:組織が硬くなること)が起きると、この関節を求心位に保つ働きが破綻し、結滞動作などの際に、激痛を引き起こすことになります。
なぜ背中に手を回すと激痛が走るのか?2つの原因
1.腕の骨が前方にズレてしまう(前方変位)
本来であれば、手を後ろに回すとき、腕の骨はその場で正しい位置(求心位)をキープしたまま回らなければなりません。
しかし、五十肩が進行することで肩の奥にある組織が硬くなると、骨が正しい位置を保てず、前の方へと押し出されるようにズレて動いてしまいます。このような状態を骨頭の前方変位と呼びます。
この「骨頭のズレ」に伴い、関節が正しい位置ない状態となり、周囲の組織や神経を圧迫し、動かしたときの鋭い激痛を生じさせることになります。
2.棘下筋の「滑り(滑走性)」の低下
結滞動作には肩関節を内側に捻る「内旋」という動きが非常に重要になります。
この内旋の際に伸びなければいけない筋肉が「棘下筋」という筋肉で、結帯動作で強く伸張する必要があるとされています。
棘下筋は、肩の後ろ側にあり肩を安定させる重要な筋肉になります。そして、その奥にある関節包(後上方関節包)と密着しています。
健康な肩であれば、これらがお互いにスムーズに滑り合うように動きますが、炎症や拘縮が起きると、この棘下筋と関節包の滑り(滑走性)が著しく悪化してしまいます。
滑りが悪くなった状態で無理に手を後ろに回すと、棘下筋を介して関節包が無理やり引っ張られることになり痛みにつながってしまいます。
五十肩は自然に治るという「誤解」について

「五十肩は放っておけば自然に治る」
一度はこのような言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、大規模な追跡調査によると、発症後7年が経過した患者のうち、実に35〜50%に何らかの痛みが残存しているというデータが報告されています。
つまり、適切な対処を行わないと、痛みが慢性化・難治化し、慢性疼痛へと移行してしまうリスクは少なくないことを表しています。
肩関節周囲の慢性疼痛や肩こりの訴えは、腰痛や頚の痛みと並んで常にトップクラスを占める、いわば国民病とも言える状態になります。
中高年になると、若い頃に比べて身体機能の細かな衰えが誰にでも生じてきます。
「そのうち治るだろう」と痛みを我慢して無理な動かし方を続けていると、関節のズレをさらに悪化させ、拘縮を長引かせてしまう可能性があるので、注意が必要です。
また、先行研究では「もう治らないかもしれない」という不安(破局的思考)が強い人ほど、胸郭(胸や肋骨まわり)の柔軟性が低下しており、それが日常生活の動作制限に直結していることも報告されています。
肩だけでなく、体全体の柔軟性にも目を向けることが大切になります。
さらに詳しく知りたいかたはこちらもご覧ください。>>>五十肩は自然に治る?それ危険かもしれません。
結滞動作改善のためのアプローチ
結帯動作の制限を改善し、痛みを根本から解消していくためには、痛みを我慢して力任せに後ろへ引っ張るような強引なストレッチは逆効果になることがあります。
近年では、適切な負荷で運動を行うことで、脳内から痛みを抑える物質が放出され、痛みを感じにくくなることが科学的に証明されています(EIH:運動誘発性痛覚減退)。
ただし、その効果を得るためには、機能解剖に基づいた専門的な運動療法(リハビリテーション)を行う必要があります。
腕の骨を正しい「求心位」に保つ

肩を動かすときに上腕骨頭が前方にズレてしまう(前方変位)のを防ぐため、関節を正しい位置へと誘導し、求心位をキープさせながら正確に動かす必要があります。
これは、「なんとなく」動かしても良くならないことが多く、習慣化したこれまでの悪い動かし方を修正していく必要があります。
理学療法士などの専門家とともに、関節が「いい位置」で動くように徒手的なサポートなどを得ながら、正しい動きを再獲得していく必要があります。
特定部位へのダイレクトアプローチ
関節が求心位で正しい位置で動かすためには、周りの硬くなっている組織や滑りが悪くなっている組織の問題を特定し、改善させていく必要があります。
ストレッチや、関節モビライゼーション、収縮訓練などを行う必要があります。
これにより、骨頭が求心位を保ちつつ、棘下筋などの周囲組織が滑走、伸張することで結滞動作の改善につながっていきます。
無理に動かすことで、痛みを強くすることや、さらに周囲の組織を損傷することもあるため、ぜひ専門家に相談してみてください。
まとめ
背中に手が回らない・エプロンが結べないというお悩みは、肩の関節の中で「骨頭のズレ(前方変位)」や「棘下筋の滑走性低下」が起きているという、体からのSOSサインになります。
大規模な追跡調査では、五十肩を放置した場合、発症から7年経過しても35〜50%の方に痛みが残存しているという報告もあります。
「そのうち治るだろう」と放置することで、関節のズレがさらに悪化し、拘縮が長引いてしまうリスクは決して低くありません。
長引く痛みを解消し、再び自分の思い通りに肩を動かせるようになるためには、何が動きを妨げているのかを早期に把握し、上腕骨頭の求心位を保ちながら正しい動きを再獲得していくことが重要になります。
また、肩だけでなく胸郭など体全体の状態にも目を向けた、専門的な視点からのアプローチが必要になります。
E-Reha(イーリハ)では、運動器認定理学療法士が、肩の複雑な構造と機能解剖をもとに、お一人おひとりの肩の状態や普段の動作を丁寧に評価し、関節の正しい動きを取り戻すための施術やセルフケアのご説明を行なっています。
「いつか治るだろう」と痛みを我慢しすぎず、肩の痛みや動かしにくさなどでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
E-Reha(イーリハ)
〒880-0844 宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1
宮崎市のリハビリ整体院、ゴルフ整体
参考文献
1)権田芳範, 金子和夫:五十肩(凍結肩)と運動療法. ペインクリニック 40(3):383-395, 2019
2)稲葉長彦:結帯動作制限を生じた肩関節周囲炎一症例に対する治療戦略.理学療法の科学と研究 14(1): 57-61, 2023.
3)北坂彰彦, 他:肩関節障害に対する臨床思考の進め方とそのポイント. 理学療法 40(3): 229-236, 2023.
4)服部貴文, 他:肩関節痛の運動療法. ペインクリニック 42(4): 505-511, 2021
5)松下健, 田中誠也:理学療法適応の肩関節周囲炎における痛みの破局的思考と臨床的特徴との関連. 慢性疼痛 42(1): 24-31, 2023.
6)筒井廣明:中高年の肩関節疾患の治療-スポーツをながく楽しむために-.臨牀と研究 95(4), 2018.
FAQコーナー
Q1. 背中に手が回らないのは五十肩が原因ですか?
A. 必ずしも五十肩だけが原因ではありません。肩関節周囲炎(五十肩)のほか、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、肩峰下インピンジメント症候群などでも結帯動作(背中に手を回す動き)が制限されることがあります。痛みや可動域制限が続く場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
Q2. 五十肩ではなぜエプロンの紐や下着の着脱がつらくなるのですか?
A. これらの動作では肩を大きく内側へ捻る「内旋」と、腕を後方へ動かす動きが必要になります。五十肩では関節包の拘縮や筋肉の滑走性低下、上腕骨頭の位置異常などが起こるため、この動作で強い痛みが生じやすくなります。
Q3. 背中に手が回らないときは無理にストレッチした方がいいですか?
A. 痛みを我慢して強くストレッチすることはおすすめできません。炎症が強い時期は症状が悪化することもあります。肩の状態に合わせて、適切な負荷で行う運動療法やストレッチを選択することが重要です。
ご予約・お問い合わせ

| 店舗名 | E-Reha(イーリハ) |
| 営業時間 | 8:30~20:00 |
| 定休日 | 不定休 |
| 住所 | 〒880-0844 宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1 |
| アクセス | JR宮崎駅から車で5分、徒歩20分 バス停柳丸町から徒歩1分 |
| 駐車場 | 敷地内にお客様駐車場41台完備 |
| エレベーター | あり(エレベーター降車後すぐ) |
| 電話番号 | 070−9202-2030 |




