膝のお皿の周りが痛い原因は「膝蓋骨低位」かも?〜理学療法士が詳しく解説

膝前面を痛がっている女性

「階段を下りると膝のお皿の周りが痛い…」

「しゃがむと膝の前が痛む…」

「病院では『骨には異常ありません』と言われたけれど、なかなか良くならない…」

このようなお悩みはありませんか?

膝のお皿(膝蓋骨)の周りに痛みが現れる「膝前面痛」は、多くの方が経験する症状の一つです。

しかし、膝の前が痛いからといって、その原因がすべて同じとは限りません。

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、膝蓋下脂肪体の炎症、膝蓋大腿関節障害など、さまざまな原因が考えられます。

その中でも、「膝蓋骨低位(しつがいこつていい)」が関係している場合があります。

今回は、理学療法士の視点から、膝蓋骨低位とはどのような状態なのか、なぜ膝の痛みにつながるのか、そして改善するためのポイントを、医学的根拠をもとに分かりやすく解説します。

膝蓋骨は一般的に「膝のお皿」と呼ばれている骨になります。

しかし、単に膝の前にある骨ではなく、膝を効率よく動かすための重要な役割を担っています。

膝蓋骨は「滑車(かっしゃ)」のような働きをしていて、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)が効率よく力を伝える構造をしています。

また、膝蓋骨は膝を曲げたり伸ばしたりするたびに、大腿骨の溝の上を上下へ滑るように動いています。

具体的にはわずかに、前後、左右、傾き、回旋など複数の動きを組み合わせながら膝関節へ加わる力を分散しています。

このような膝蓋骨の動きにより、膝の曲げる角度に応じて膝蓋骨の接触部位が変化し、関節への負担が分散されるとされています。

つまり、膝蓋骨は膝の角度や動きに応じて、適切に動くことで膝の負担を減らしていますが、膝蓋骨の位置が通常より低くなったり、動きが硬くなることで、膝へ加わる力のバランスが変化し、膝前面の痛みにつながることがあります。

関節は適切な位置でコントロールできていないと、どこかにストレスが加わり痛みにつながりやすくなります。

膝蓋骨低位は、基本的には左右で高さを比較して判断していきます。

膝蓋骨は膝蓋骨を支える筋肉や軟部組織、膝の使い方などが影響し、正常な位置や動きが保てなくなった結果として、その位置が通常よりも低い位置になってしまします。

つまり、「膝蓋骨が低いこと」が問題なのではなく、膝蓋骨が低い位置になってしまう背景を考えることが非常に重要です。

では、どのような要因が関係しているのでしょうか。

①太ももの筋肉がうまく働かなくなる

膝蓋骨は、大腿四頭筋と膝蓋腱の間に位置しています。

そのため、太ももの筋肉の働きは、膝蓋骨の位置や動きに大きく影響します。

特に大腿四頭筋は膝蓋骨を引き上げる働きがあるため、筋力が低下していたり、筋肉のバランスが崩れていたりすると、膝蓋骨を適切な位置へ導く力が弱くなります。

また、筋肉の強さだけでなく、適切なタイミングで収縮することも非常に重要です。

本来であれば、膝を曲げ伸ばしする際に、大腿四頭筋が協調して働き、膝蓋骨が大腿骨の上を滑らかに動きます。

しかし、この協調的な動きが崩れると、お皿の動きが乱れ、膝蓋大腿関節の一部へ負担が集中しやすくなります。

② 膝のお皿の周りの組織が硬くなる

膝蓋骨の周囲には、大腿四頭筋、膝蓋腱、膝蓋下脂肪体、関節包、支帯(膝蓋骨を支える組織)など、多くの軟部組織があります。

これらの組織は、膝を曲げたり伸ばしたりするたびに、お互いが滑るように動いています。

しかし、炎症や手術後、ケガの影響、あるいは長期間の使い過ぎなどによって硬さや癒着が生じると、膝蓋骨の滑らかな動きを妨げる原因になり得ます。

特に、膝蓋下脂肪体は痛みに敏感な組織であり、正常な滑走が失われることで膝前面痛に関与することが知られています。

このように、周りの組織の影響で、膝蓋骨が本来の軌道で動きにくくなり、膝蓋骨低位や膝前面痛につながることがあります。

③ 姿勢や身体のバランスの影響

膝蓋骨は、膝だけの影響を受けているわけではありません。

例えば、股関節の動きや足首の硬さ、O脚やX脚、骨盤や体幹のバランスの乱れなどがあると、歩行やしゃがみ動作の際に膝へ加わる力が変化します。

その状態が続くことで、膝蓋骨へ繰り返し偏った負担が加わり、正常な位置や動きが保ちにくくなることがあります。

文献でも、膝蓋骨低位だけでなく、膝蓋骨の傾き(Tilt)や回旋、アライメントなどを総合的に評価することが重要とされており、膝だけではなく、全身のバランスまで踏まえ考えていくことが大切になります。

④ 歩き方やしゃがみ方などの「動きのクセ」

姿勢が良くても、動き方にクセがあると膝へ負担がかかることがあります。

例えば、階段を下りるときに膝が内側へ入る、ランニングで着地の衝撃が強いなど、普段の動きの特徴から膝蓋骨が正常な軌道から外れやすくなり、膝蓋大腿関節への負担が増加します。

そのため、歩行や、しゃがみ込み、階段などの動きを確認することが非常に重要になります。

このように、膝蓋骨低位は一つの原因だけで起こるものでなく、さまざまな要因が重なり合って生じるています。

そのため、「○○をすれば治る」という単純なものではなく、「なぜ膝蓋骨が低い位置になってしまったのか」を正しく評価し、その原因に対して適切にアプローチすることが重要です。

膝蓋骨低位があるからといって、必ず痛みが生じるわけではありません。

しかし、膝蓋骨の位置や動きが変化すると、膝のお皿と太ももの骨(大腿骨)が接する部分にかかる力のバランスが崩れ、膝前面の痛みにつながることがあります。

では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。

①膝のお皿には体重以上の力がかかる

膝蓋骨は、膝を曲げたり伸ばしたりするたびに、大腿骨の表面を滑るように動いています。

この動きによって膝にかかる力を分散し、関節や軟骨への負担を軽減しています。

しかし、膝蓋骨低位が起きていると階段やしゃがむ動作では膝蓋骨と大腿骨が強く押し付けられる状態になり、体重を大きく上回る力が関節に加わってしまいます。

膝蓋骨の位置や動きに異常がある状態が続くことで、一部に負担が集中しやすくなります。

②お皿がスムーズに動かない

前述したように、膝蓋骨は、ただ上下に動くだけではなく、膝の角度に合わせて、前後左右、傾きなどの細かな調整を繰り返しています。

この動きによって、膝のお皿と太ももの骨が接する位置が少しずつ変わり、同じ場所に負担が集中しないようになっています。

しかし、膝蓋骨低位では、この滑らかな動きが妨げられ、その結果、本来であれば分散されるはずの力が一部分に集中し、膝前面の痛みにつながってしまいます。

また、膝蓋骨周囲にある靱帯や、腱、関節包などの組織も、膝蓋骨の動きが悪くことで、繰り返し引っ張られたり圧迫されたりしやすくなり、ストレスがかかってきます。

特に膝蓋下脂肪体は痛みに敏感な組織のため、機械的な刺激が繰り返されることで、膝前面痛の原因になることがあります。

そのため、膝のお皿だけではなく、その周囲の組織の状態もあわせて確認することが大切になります。

このように、膝蓋骨低位は膝前面痛に関与する要因の一つですが、実際には、

  • 筋肉の働き
  • お皿の動き
  • 股関節や足首の柔軟性
  • 歩き方やしゃがみ方

など、複数の要素が組み合わさって痛みが生じていることがほとんどです。

そのため、「膝蓋骨低位がある」状態でも、それだけで痛みの原因を決めつけることは危険です。

本当に重要なのは、膝蓋骨低位という結果ではなく、「なぜその状態になったのか」「どのような動きで負担がかかっているのか」を適切に評価することになります。

膝蓋骨低位は「膝のお皿が低い位置にある」という結果であり、その背景には筋肉の働きや関節の動き、姿勢、身体の使い方など、さまざまな要因が関係しています。

ではどのように改善すればいいのか?

① 膝蓋骨の動きの確認

膝蓋骨は、膝を曲げたり伸ばしたりするたびに上下へ滑るように動きます。

さらに、わずかではありますが、前後や左右にも動きながら膝への負担を分散しています。

E-Rehaでは、まずこの動きが硬くなっていないか、お皿がスムーズに動いているかを丁寧に確認します。

また、左右の膝を比較しながら、お皿の位置や動きに違いがないかも確認します。

こうした確認を行うことで、膝のお皿そのものに問題があるのか、それとも周囲の組織が影響しているのかを判断していきます。

② 太ももの筋肉の状態を確認

膝蓋骨は、太ももの前側にある大腿四頭筋とつながっているため、筋肉の状態を確認することが重要です。

特に、筋肉が痩せていないか(萎縮)、左右差、力の入り具合(筋力)、硬さ(柔軟性)などを確認します。

筋肉は「強い・弱い」だけではなく、「必要なタイミングでしっかり働くか」も重要です。

実際に筋肉に力を入れて膝を動かした際の、膝蓋骨の動きなども確認していきます。

③周囲の組織の状態を確認

膝蓋骨は膝蓋腱、靱帯、膝蓋下脂肪など複数の軟部組織と繋がっています。

そのため、これらの軟部組織の硬さ(柔軟性)を確認し、膝蓋骨の動きに影響を与えていないか把握していくことが重要です。

④ 実際の動きを確認

膝の状態だけでなく、実際の動きを確認し、特徴を把握した上で、膝の痛みを捉えていく必要があります。

歩行や立ち上がり、しゃがみ込み、階段など、実際に痛みが出る動きを確認します。

例えば、しゃがんだときに膝が内側へ入ってしまう方や、立ち上がる際に片側へ体重をかけるクセがある方では、膝のお皿へかかる負担も変わってきます。

動きを確認することで、「どの場面の」「どの動きで」「どのような負担がかかっているのか」を具体的に把握できます。

⑤身体全体のバランス確認

膝は、股関節や足首と連動して動いているため、股関節や足関節、体幹の硬さや不安定さなども確認し、膝にかかる負担を把握していくことも重要です。

⑥原因に合わせた改善方法

上記のように、複数の原因を評価し、その原因が分かったら、その状態に合わせて改善方法を選択していきます。

膝蓋骨の動きが悪い場合は、膝蓋骨モビライゼーションなどで、実際にお皿を動かしていきます。

大腿四頭筋が弱い場合や、機能が低下している場合は、筋力トレーニングや促通運動などを行っていく必要があります。

周囲の組織の柔軟性に問題がある場合は、滑走を促すようにストレッチや、マッサージなどで膝蓋骨が滑らかに動ける状態を目指していきます。

動きの問題がある場合は、実際に動作の練習を行い、股関節や膝の動かし方を修正したりもします。

また、お皿の位置や動きを一時的に補助し、日常生活で膝への負担を軽減する目的で、テーピングを使用することもあります。

ただし、テーピングだけで根本的に改善するわけではないので注意が必要です。

膝のお皿の周りが痛い原因は、一つではありません。

膝蓋腱や膝蓋下脂肪体、関節軟骨など、さまざまな組織が関係しているほか、今回ご紹介した「膝蓋骨低位」が膝前部痛の原因になることがあります。

しかし、膝蓋骨低位があるからといって、それだけで痛みが生じるわけではありません。

大切なのは、膝蓋骨が低い位置になった「原因」を見つけることが重要になります。

筋肉の働きや柔軟性、膝のお皿の動き、歩き方やしゃがみ方などを総合的に評価し、その原因に合わせて運動療法やセルフケアを行ことで、膝への負担を減らし、痛みの改善を目指していきます。

E-Rehaでは運動器認定理学療法士が、膝の痛みや動きの状態を詳細に評価し、一人ひとりの状態に合わせた施術やセルフケアの提案を行なっています。

「どこへ行っても変わらなかった」「何をしたらいいのか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。

E-Reha(イーリハ)

〒880-0844 宮崎県宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸D2-1

宮崎市のリハビリ整体院、ゴルフ整体

参考文献

1)阿南雅也:バイオメカニクスに基づく膝関節疾患患者の評価と治療の考え方と進め方. 理学療法 42(4): 339-349, 2025.

2)八木茂典: 膝関節不安定性に対する理学療法.スポーツメディスン 24(6): 15-21, 2012.

3)神原雅典:膝蓋大腿関節障害に対する理学療法診断の進め方. 理学療法 37(12): 1129-1139, 2020.

4)今屋健, 大宅一平:機能解剖に基づく膝関節の理学療法. 理学療法福岡 (32): 44-50, 2019.

Q1. 膝蓋骨低位とはどのような状態ですか?

A. 膝のお皿(膝蓋骨)が、本来あるべき位置よりも低い位置にある状態のことです。左右の膝を比較して判断していきます。膝蓋骨低位があるからといって必ず痛みが生じるわけではなく、なぜその位置になったのかという原因を評価することが重要です。

Q2. 膝蓋骨低位は膝だけの問題で起こるのですか?

A. いいえ、膝だけの問題ではありません。股関節の動きや足首の硬さ、O脚やX脚、骨盤や体幹のバランスの乱れなど、全身の状態が歩行やしゃがみ動作時の膝への負担に影響するとされており、全身のバランスを踏まえて考える必要があります。

Q3. 膝蓋骨低位の改善にはどのような方法がありますか?

A. 原因に応じて、膝蓋骨モビライゼーション(お皿の動きの改善)、筋力トレーニングや促通運動、ストレッチやマッサージによる周囲組織の柔軟性改善、動作練習による股関節・膝の使い方の修正などを行います。またテーピングを一時的な負担軽減の目的で使用することもありますが、それだけで根本的に改善するものではありません。

店舗名E-Reha(イーリハ)
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